ビジネスパーソンの視点からみたALIFEの面白さ、使えそうなポイントの紹介
ALIFEという言葉を最近聞いたけど、イマイチどんな分野なのか分からない。ビジネスでの応用という視点からALIFEを理解したい。という方々に、ビジネスパーソンの視点からみたALIFEの面白さ、使えそうなポイントをお伝えしていきたいと思います。
今回の記事は、M&Aやベンチャー投資に投資に10年近く渡って携わってきたビジネスパーソンであり、私の長年の友人でもある、矢本あやさんに、ビジネスパーソンの視点から弊著『ALIFE | 人工生命 より生命的なAIへ』を読んでもらった感想を読書会という形で議論したものをベースとしています。
M&Aで起こる人材の多様化と成長
この答えのヒントをALIFE(人工生命)は教えてくれます。たとえば、ALIFEによる生態系のシミュレーションから、一見、何の利益ももたらさないような「寄生」する種が、実は回り回って、宿主の利益をもたらすような成長を生み出すことがあるということが示されています。また、目的や課題を解決するためには、すぐには役に立たないように見えるものでも、多様な種の存在が、実は目的を達成するための重要なステップとなることがあります。
多様性が生み出す衝突、M&Aでいうと異なる企業の文化がぶつかり合うことが、組織にとって成長のきっかけになることもある。ALIFEのアルゴリズムを使った実験において、システマティックに実証されていることにより、M&Aにおける衝突が結果的には、成長のために無駄ではないということが確実にあることを示唆してくれます。
切り捨てられるものの中に次の事業のヒントがある
ひとつの目的に向かっているだけではどこかで限界に達するのではないか、環境の変化があったときには対応できなくなるのではないか、という直感的な肌感覚的が正しいかもしれないことを、ALIFEのアルゴリズムをコンピュータで走らせた結果が示しています。
具体的には、新規性探索アルゴリズムや品質多様性アルゴリズムといったALIFEのオープンエンド(=終わりなき)進化を目指したアルゴリズムです。多様な解を探索することによって、一見、ひとつの解では、目的に辿り着けないようにみえても、集団でいろいろな解を探索していると、結果的に思わぬパスが見いだされることがあるのです。
特に、品質多様性アルゴリズムは、最終的には採用されなかった提案(品質多様性アルゴリズムでいうアーカイブ)がまた再考される機会が与えられます。このアルゴリズムでは、イマイチと判断された提案に戻ることも進化のために必要なパスとするのです。
ビジネスにおける「邪魔」なものの一つに、管理コスト、自社と競合する新規事業、などがあると思いますが、まさしくこの品質多様性アルゴリズムでも、計算コストが高くなる傾向にあります(それまでの提案を捨てていくアルゴリズムと比較すると)。
しかし、前述通り、すでに消えた提案が目的に必要なパスの可能性もあるので、ビジネスにおいても、あえて意識的に無駄と思うものでもを内包する覚悟を持てるようになるといいと思います。
「点と点がつながる」
ALIFEの発散的なアルゴリズム(新規性探索アルゴリズムや品質多様性アルゴリズム)は、「目的」という外発的動機を重視した行動をしていなくても、内発的動機に基づいた行動が結果的に目的を達成することを実証してくれます。「自分はこれが好きだから」あるいは「得意だから」という理由で興味を追求することで、結果的に実現したいことが出来るようになることがあるのです。
人間の思考の枠に囚われないアイディアを生み出す
ALIFEは、発散的な探索を行うため多くの解を出してくれる。ひとつのベストな解を出そうとするのではなく、たくさんの多様な解を探すことが目的。現実世界で発散されるためには、他者を巻き込んだり、コミュニティを作ったりすることが、多様な解につながるのです。
子育てのヒントを提供してくれるALIFEアルゴリズム
子供が初めて学ぶことを、アルゴリズムにおける「初期値」に例えて考えてみます。目的を定めて、その目的に近づいているかどうかで、行動を選んでいく「目的型探索」アルゴリズムだと「初期値」がすごく影響します。つまり、最終的に見つかる解が初期値に依存して、初期値ごとにかなり異なるのです。
一方で、ALIFEのアルゴリズムは、目的を達成することよりも、多様な解を探索することを重視し、かつ、さまざまな環境を用意します。そこで学習させるアルゴリズムを走らせると、どんな初期値からでも、同じような多様性をカバーする解の集合が見つかります。
子育てにおいてもいろんな人たちと関わることが大切、とよく言われると思いますが、アルゴリズムも同様の結果が示されているのです。いろいろな環境や人に触れて子育てをすることで、初期値に依存しない、バリエーションが生まれるのかも知れません。
すべての人にそれぞれ活躍できるニッチがある
夢中になることがあり、それを追求していると、新しいことにつながり、続けていると思わぬところに辿り着けているのではないか、ということをアルゴリズムは示してくれます。
そして、人によって向かうところが違う。思いつめずに、ひとつの目的に向かってそれを達成しないといけないとか思わなくていいのではないかと、ALIFEのアルゴリズムの実験結果を見ていると思わせてくれます。必要なことは環境を変えたり、多様な人と関わるとかそういったことかもしれないです。
ここまで、ALIFEについて、ビジネスの視点から、そして子育てや人材育成という観点から、矢本あやさんとお話しした内容をまとめました。
ALIFEの詳しい歴史やアルゴリズムは、弊著『ALIFE | 人工生命 より生命的なAIへ』で詳しく解説しています。よろしかったらぜひ手に取ってみてください。
きっと、これまでのAI的なパラダイムとまた違った世界があり、それがアルゴリズムとして実装され、課題を解くために実用的に使われていることが分かっていただけると思います。
ここまで長文読んでいただきありがとうございました。
そして、ビジネスでの応用という視点からALIFEを考えてみるきっかけを提供してくれた、矢本あやさんに感謝を込めて、この記事を終わりたいと思います。
表紙画像出典:https://twitter.com/guskamp/status/1514181578934546437/photo/2
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