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論文を読むときに使えるオススメツール Semantic Scholar と Connected Papers

大学で授業や研究を通じて、学生さんたちとコミュニケーションする醍醐味のひとつは、新しい情報に触れられるということだと思っています。

研究室のゼミなどで、スクリーンシェアされる画面で使っている便利そうなツールを見て教えてもらったり、ツールの新しい使い方を教えてくれたりします。

先日も、Slackでtimesチャンネルという使い方があることを知り、早速、研究室のSlackでも導入しました。Twitterのつぶやきのような個人のチャンネルをSlackでも作る感じです。

timesチャンネルを教えてくれた研究室の須田さん (@suda_sudame)が、私が書いた論文の探し方(情報系)noteの投稿をみて、論文を読むための便利なツールをまとめてくれました。

ということで、紹介されている5つのツールの中から、すぐに論文を読むときに活用できそうな「Semantic Scholar」と「Connected Papers」を使ってみた感想を書きたいと思います。

Semantic Scholar

Semantic Scholarは、アレン人工知能研究所(Allen Institute for AI)が開発している機械学習を活用した学術文献検索サービスです。マイクロソフトの共同創設者のPaul Allenによって2014年に設立された研究所です。

Semantic Scholarは、論文内容を自動で一文に要約して表示する機能(TLDR機能)など、AI技術を駆使したサービスを提供している点が特徴的です。

検索してみる

早速、「virtual creatures」「artificial life」をキーワードにSemantic Scholarで検索してみましょう。

Semantic Scholar「virtual creatures」「artificial life」の検索結果

検索結果には、タイトル、著者、掲載場所、日付といった論文情報と共に、TLDR機能による論文内容の要約、引用回数、PDFへのリンク(ある場合は)、論文サイトへのリンクなどが表示されています。

表示結果は、デフォルトで、キーワードとのマッチング度合い(Sort by Relevance)でランキングされています。このランキングの詳しいアルゴリズムは分からないですが、キーワードとのマッチング度合いだけでなく、最近の論文で、ある程度、引用されている論文がランキングの上に来るようになっているようです。

この分野に詳しい人であれば、ランキングの上からタイトルや、掲載された学術雑誌、会議名から、どの論文が自分の興味関心と関係しているか判断できそうですが、そうでない場合は、個々の論文の良し悪しを判断するのは難しそうです。

影響度でランキングしてみる

そこで、「Sort by Most Influential Papers」という、論文の影響度によってランキングした結果をみてみましょう。右側のプルダウンメニューから「Sort by Most Influential Papers」を選びます。

Sort by Most Influential Papersを選択

すると、次のような素晴らしい結果が出てきました。

「Sort by Most Influential Papers」でランキングした結果

まず、Karl Simsの「Evolving virtual creatures」がトップに表示されています。仮想生物(virtual creatures)に関する古典論文です。納得の結果ですね。

2番目の論文は、Ken Stanleyらによる「Evolving a diversity of virtual creatures through novelty search and local competition」という、新規性探索アルゴリズムという目的型志向でない新しい進化アルゴリズムのパラダイムを使って、仮想生物を進化させた結果を述べている影響力の高い論文です。

3番目の論文は、Karl Simsが1番目の検索結果に出てきている国際会議論文をベースに「Artificial Life」という学術雑誌に投稿した論文です。

そして、4番目に出てきている「Unshakling evolution: evolving soft robots with multipe materials and a powerful generative encoding」は、Hod Lipsonらによる仮想生物に関するエポックメイキングな論文です。この論文で、多様な形と動きをする「ソフトな仮想生物」をつくり出すことが可能であることがはじめて示されました。

ここまででも、Semantic Scholarすごいですね。チェックするべき論文が検索結果の上位にきちんと出てきます。

検索結果には、「''」マークで示される引用回数の他に、「💡」マークで「影響力の高い論文」に引用されている回数が示されています。

引用回数(1,776回)と影響力の高い論文に引用されている回数(85回)を表示

論文の詳細ページ

タイトルをクリックすると個々の論文の詳細ページが表示されます。

論文の詳細ページ

論文で使われている図とその右側にキーワード(Figures and Topics)、この論文を引用している論文リスト(Citations 1,176件)、論文中で引用している論文(References 28件)、関連論文(Related Papers)がまとめられています。

Citationsには、この論文を引用した論文がリストアップされています。「論文の探し方(情報系)」で紹介したResearchGateとでは、論文中で引用されている前後の文章もピックアップしてくれているので、Semantic Scholarと併用して使うと便利そうです。

Semantic Scholarの「Sort by Most Influential Papers」ランキング機能、詳しくない分野に関する論文を検索するときに活躍しそうですね。

Connected Papers

では、次に、Connected Papersを使ってみます。

Connected Papersは、Semantic Scholarが公開している論文データを使って、関連する論文を抽出し、グラフで可視化してくれるサービスです。

Connected Paperのトップページ

検索してみる

早速使ってみましょう。ページにアクセスして、論文のタイトルを入力します。「Evolving Virtual Creatures」と入力してみます。すると、次の図のように論文を一意に特定するための候補が出てくるので、最初に出てくる「Sims, 1994」の論文を選択します。

可視化する論文を一意に特定する

グラフ可視化結果

すると、次のようなグラフが作成されました。ひとつひとつの円が論文、円の大きさは引用回数を表しています。また色が濃いほど最近の論文です。

「Evolving virtual creatures」のグラフ可視化結果

グラフから、まず大きく2つのクラスタ(塊)があることが分かります。右側のクラスタは、SIGGRAPH論文を引用している論文たち。そして、左側のクラスタがKarl SimsによるSIGGRAPH論文をALIFE Jounalバージョンです。このようにConnected Papersを使うと、SIGGRAPH論文を引用している論文だけをチェックしていると、気づかない重要な関連論文を見つけるのに役立ちそうです。

他のツール

さて、ここまでSemantic ScholarとConnected Papersを使ってみた結果をみてきました。特に、Semantic Scholarは論文を検索するときには、取り入れたいツールです。Connected Papersも、いくつかの関連論文を調べた後に、関連する論文の全体像をなんとなく掴みたいときに、重宝しそうです。

これらふたつのツールを教えてくれた須田さんの論文を読むときに使えるツールの紹介ページでは、他にも、論文の新着情報に関するメールをSlackに転送する方法や、Scrapboxを利用した論文メモのとり方、また、筑波大学生向けにTulips Searchを使って論文PDFにアクセスする方法が紹介してあります。ぜひチェックしてみてください。

ここまで長文読んでくださりありがとうございました!
読んでくださった皆様の論文ライフが少しでも快適になりますように。


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