横浜市各区の防災計画書は、市役所「横浜市防災計画書(震災編)」のコピー&ペーストなので、様々な問題が多数。そこでまずは防災計画を最新版に更新するタイミングで、全てのプロセスを改善する提案した。(Rev1.0)

1.横浜市各区の防災計画書は、市役所「横浜市防災計画書(震災編)」のコピー&ペーストである。
横浜市震災対策条例 (制定 平成10年2月25日横浜市条例第1号 改正 平成25年9月30日横浜市条例第56号)の第5条3項で、「区長は、各区の地域性に応じて区別防災計画を作成し、その実施を推進するものとする。」と記されている。しかし、ほとんどの区別防災計画書は、市の防災計画書の多くのページをコピー&ペーストしたものである。
2.地域防災拠点(避難場所、以下拠点と記述)が全く足りない。足りているのは青葉区と都筑区ぐらいである。
下図(一部抜粋)の地域防災拠点当たりの想定避難者数(横浜市地震被害想定調査報告書(平成24年10月)による)が拠点のキャパシティである一人一畳程度のスペースで1000人(川崎市の担当者に聞いたところ、1000人だと校舎の廊下まで避難者が溢れる状態だろうと)を遥かにオーバーしている。西区、中区、南区、鶴見区など拠点の数が圧倒的に足りない区がある(下図参照:全ての区は調べていないが)。1防災拠点の平均避難者数は、想定避難者数を単純に防災拠点数で割った値なので、参考程度で実際にはこの値から大きく外れることはないと思われる。他に避難場所がないので、

当然、各拠点キャパシティの違いから各拠点のマニュアルも違ってくる。例えば、西区、中区、鶴見区と青葉区、都筑区とは違ってくるはずである。しかし、防災計画書と同じように、各拠点のマニュアルは、市役所作成の「拠点開設・運営マニュアル」(平成4年9月版)である。
しかも、水・食料などの備蓄品は拠点当たり一律に決まっている。例えばトイレパックは一律5000枚である。青葉区は5日ぐらい持つかもしれないが、西区、中区、鶴見区などは2日ぐらいで底をつく。拠点での避難生活は水も食料もすぐになくなり大変厳しいものになる。

翻って川崎市の場合は地震対策条例第8条に則り、圧倒的に足りない拠点を補うために497箇所の拠点補完施設への避難を準備している(必ずしも避難できるとは限らないことも明記)。拠点補完施設一覧表【危機管理本部】令和4年8月25日時点 この中には保育園、介護施設などの公的施設や神社お寺まで、市民の拠点として機能するよう協力要請している。ただ、これでも拠点数は十分ではないので、地域住民による自主防災組織による共助を推奨している。なぜなら川崎市の条例によると市長が全責任を負っているからであると思う。

川崎市は、川崎市備蓄計画の概要によると、一人当たりの必要数を基に備蓄品を計算し各区へ配分している
当然横浜市も各拠点の想定避難者数に応じて、備蓄するのが、より現実的である。西区と青葉区で備蓄数は違うはず。

3.その他「拠点開設・運用マニュアル」には、学校に生徒がいない前提で書かれていたり、避難者の個人情報を紙で管理するが、それら個人情報が漏れないように管理するセキュリティの視点が完全に抜けているなど、問題が多数あるが、それはまた次回に投稿する。

4.横浜市への提案内容を最後に記述する。

  • 東京都の「首都直下地震等による東京の被害想定(令和4年5月25日公表)」のように、横浜市も被害想定の見直しを行い、そのタイミングで市役所と区役所のBCP・防災関連ドキュメント類を全て更新し、同時に毎年これらドキュメント類を見直し更新するプロセスを確立するプロジェクトを提案する

  • 実際、横浜市の減災計画の実施は多大の成果(タウンニュース「横浜市防災計画 避難者想定40%減へ」)を挙げているにも関わらず計画書に反映されていない。そして市民へのコミュニケーション不足から、多くの市民はこの多大の成果を知らない。プロジェクトで市民へのコミュニケーション方法の改善も行う。これら減災計画の成果も以下のようなKPIと共にプロジェクトの中で最重要なKPI(Key Performance Indicator)の一つとして設定する。

    1. 区毎の登録ボランティアの数、ボランティアの訓練参加者数

    2. 防災教室や避難訓練の参加者数

    3. 拠点後毎のマニュアル完成数、地域を含めた区割り

    4. などなど

  • 市長・区長及び市職員がリーダーシップを発揮できるように条例改正も提案する。

以下プロジェクトの概要をまとめると
① 想定被害の更新
② 横浜市防災計画書の更新
③ 各区のリスクに合わせた各区防災計画書の更新
④ 拠点開設・運営マニュアルのガイドライン化と各班の標準マニュアルの作成
⑤ 防災計画から単年度の減災実行プランの作成、実行、評価、再実行のPDCAサイクルを回す
⑥ 避難訓練は実際の想定避難状況に合わせて実施する⑦ (5)と(6)の結果を受けた各区の防災計画書を更新して次年度の減災プランの作成し、このプロセスを毎年実行する。