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固定担任制の廃止について

こんにちは,HARuです。今日は「普通を疑う」という話。

「みなさんは担任の先生が決まっていない」と聞くとどんな印象を抱かれますか?

「そんなの常識的にあり得ない」「うちの子の面倒は誰が見てくれる?!」「あの先生とはウマが合わなかったからありがたい」など様々なご意見をお持ちかと思います。
そこで今回は,下記の本の中から,固定担任制の廃止について私なりの意見をお話しさせていただこうと思っています。

ちなみに,私は「固定担任制廃止推進派」です。

では,いってみましょう。

学校の「当たり前」をやめた

この本は一時期学校関係者の間では話題になりました。しかも,衝撃と共に。何が衝撃であったかといえば,学校で今まで当たり前に実施するものだとされていたことを,ドンドン廃止していったというのです。
ちなみに,工藤校長先生が廃止なさった制度は大まかに言っても

・宿題

・定期考査

・固定担任制

・運動会の「クラス対抗」

などです。これだけ聞くと,

「本当に子どもたちのためになるの?」とお思いになる方もいらっしゃると思いますが,私は,この本を読んで,以上の制度の廃止は間違いなく子どもたちのためになる!と言い切れます。

固定担任制

この著書についての詳細や感想はまた後日述べるとして,今回は「固定担任制の廃止」について,私の意見を述べさせていただこうと思います。

現在,多くの学校では「固定担任制」を採用しています。固定担任制というのは,1年1組は〇〇先生,2組は□□先生というように,いわゆる「担任の先生」がいる一般的な学校のイメージです。では,この制度に関して,私の考えるメリットデメリットをみてきましょう。

メリット

・子どもたちとの信頼関係が築きやすい。

・子どもも保護者の方も誰に相談すれば良いか明確

デメリット

・ベテランと若手で学級経営の力量さが如実に表れる

・相性の合わない子どもは1年間ずっと不幸

・先生の得意を活かしにくい

・学級王国になりやすい

・子どもの成長に気づきにくい

では,それぞれ詳しくお話しします。

・子どもたちとの信頼関係が築きやすい

心理学にも「単純接触の原理」というものがあります。簡単に言えば,会う回数が多ければ多いほど心理的距離感が近く感じるというものです。固定担任制では,当然,毎日同じ担任が教室に行きますので,子どもたちとの距離感は近くなり,信頼関係も築きやすいでしょう。逆に,毎日観察しているがゆえに,子どもたちの表情の微妙な変化にも気づきやすいという面もあります。

・子どもも保護者の方も誰に相談すれば良いか明確

お子さんのことで困った際,まずは担任の先生に!と思いませんか?固定担任制では,「担任」が決まっているため,誰に相談すればいいかが明確です。ただし,逆に「担任」の先生と相性が悪かったり,(保護者の方に言わせると)ハズレ教師だった場合,誰に相談すればいいか困ってしまうというデメリットもあります。


・ベテランと若手で学級経営の力量さが如実に表れる

教師は採用された瞬間から「先生」として扱われます。採用年度が早かろうと遅かろうと子どもたちや保護者の方には関係ありません。一人前の先生として,いきなり現場の最前線に放り出されるわけです。一般企業ならば,多少なりにも新人研修がありますが,教員の世界にはありません。しかも,採用人数が減少している昨今では,大学を卒業したて,教員になりたてでも「担任」になることが多くあります。当然,隣のクラスのベテランの先生との力量差があるのは仕方がないことです。若手の先生方が勉強していない訳ではありません。どうしても,学級経営は経験値によるものが大きいのです。それは,予想できないトラブルへの対処の回数と言い換えてもいいでしょう。学級というのは常に予想外の出来事であふれかえっています。おそらくそんなことはしないだろうという予想は見事に裏切られるのです。その際に,頼りになるのはベテランの先生の経験値であることが多くあります。むしろ,最近の若手の先生方は真面目で優秀です。であったとしても,やはり,学級経営というのは難しいものだと感じています。

・相性の合わない子どもは1年間ずっと不幸

人には相性があります。学校はこれに目を背け続けてきました。
「みんな仲良く」「クラスの絆を深めよう」
ですが,どうしても合わない人はいるものです。大人ですら合わないと感じる人がいるのですから,子どもはもっといることでしょう。子ども同士ならば,まだ話さない,近くに寄らないという選択肢を取りようもありますが,担任との相性が悪かった時は最悪です。1年間,苦手な担任の先生に指示をされ,うまくいかなければ指導され,ますます嫌な気持ちになります。これは私自身の経験からも感じることです。私は義務教育の中で,担任の先生方には恵まれた方だと思います。(だからこそ,現在教師をしている訳ですが)それでも,どうしても相性が悪いなぁと感じた先生もいらっしゃいました。
逆に相性バッチリの先生もいるはずです。その先生が隣のクラスの担任だったとしたら,子どもたちは1年間隣のクラスを羨ましがりながら過ごす訳です。それでは,あまりも子どもたちの時間がもったいない。

・先生の得意を活かしにくい

学校は横並びの教育を良しとしてきました。しかし,教師も人間です。当然一人一人の教師に得意不得意があります。以下引用。

一人ひとりの教員にはそれぞれ得意分野があります。
それを生かすことが,生徒にとって大きな価値につながっていきます。生徒のサインを読み取るのが得意な教員,保護者対応が得意な教員,ICTの活用に長けた教員,さまざまな個性を活かし合うことができる学年運営に変える。それが全員担任制です。
 参考にしたのは「チーム医療」の考え方です。
引用:学校の「当たり前」をやめた。生徒も教師も変わる!公立名門中学校長の改革 工藤勇一著

私はどちらかといえば,生徒の心理的な変化やサインを読み取ることが得意です。表情が違っていたり,雰囲気がおかしいと感じればすぐに声をかけることができます。そのように個人に配慮しながらも,全体を動かすことの方が得意です。しかし,一方で生徒一人一人に,細やかな配慮をしながら学級経営をすることは苦手です。
当然,私とは真逆のタイプの先生もいらっしゃいますし,いわゆる熱血型の先生もいらっしゃいます。人間ですから,教師と一言に言っても様々な人がいる訳です。現在の「固定担任制」では,その教師それぞれの良さを全て発揮することは難しいのが現状です。
例えば,一人の先生が力を発揮すると,あのクラスの担任はいいけど,こっちのクラスの担任は良くないというような噂が流れることもあります。人それぞれの特性を活かして学級経営をしているだけですが,それでも「横並び」が求められることがあるのです。

・学級王国になりやすい

一人の教師がずっと同じクラスにいるので,メリットに挙げたように信頼関係を築きやすいということもありますが,反対にその先生との信頼関係が強固になるすぎるという面もあります。
特に小学校では「学級王国」と揶揄されることが多いのですが,担任がクラスの子どもたちを従え,まるで王国のように経営されている状態を例えたものです。子どもたちは先生の言うことを100%信じ,まるで担任に忠誠を誓っているかのような状態になります。もちろん,担任としては子どもたちが慕ってくれるので嬉しいのですが,健全な状態とは言い難いでしょう。

・子どもの成長に気づきにくい

みなさんは家族のちょっとした変化に気づきますか?逆にたまにしか会わない親戚の変化には気づいたりするのではないでしょうか?
人は常に近くにいる人の変化に気づきにくいものです。これは学級でも起こり得ます。中学校では,教科によって担当が変わり,複数の目で見ることも多いのですが,それでも,担任として学級に関わる時間は一番長くなります。さらに,小学校では一担任がずっとその学級に張り付いています。これは,子どもたちの成長を看取るという観点からいうと望ましくないと思っています。一人の教師の目から見る視点は,どうしても偏りがちです。そんな時に複数の目で子どもたちを見守る体制が出来上がっていれば,子どもたちのちょっとした変化や成長にも気づくことができ,子どもたちの能力を更に伸ばすことができると考えます。

と,ここまで,メリットとデメリットについて詳細に述べてきました。
他にも麹町中では,三者面談なども保護者からの逆指名制度だそうです。例えば,中3の進路を考える際に,誰しも信頼できる先生に相談したいというのは普通の感情でしょう。

固定担任制廃止を阻むもの

これだけメリットが大きく,デメリットもあるにも関わらず,なぜ全国の学校において固定担任制が廃止にならないのでしょう。それは,間違いなく,学校の変化を嫌う体質のせいでしょう。学校教育は明治以来120年近くも同じような体制で行われてきました。これまで,時代も社会も大きく変化してきたにも関わらずです。その根底にあるのは,「前例踏襲主義」や「批判回避思考」が大きな原因でしょう。今までやってこなかったから,新しいことに挑戦して批判されたくない,そんな思いが新しいことへの挑戦を阻んでいるのだと思います。

新しいことへ挑戦をしうまくいかなければ撤退(元に戻す)する

そんな考えが認められない風潮にあるのも事実です。もちろん,固定担任制を廃止するには,困難もあります。職員間のコミュニケーションを密にとったり,情報共有をこまめにしなけばいけません。これは学校全体を変革するということにつながります。ですので,個人でこの改革を実行することは中々難しいところがあります。しかし,それでも私は,子どもたちのために本当の学校の目的は何かということを考え続け,自分にできる行動を起こしていきます。

教員の時間確保が必須

一方で,この「固定担任制」の問題を認識していない教員も多くいます。Twitterなどでは最先端の知見をお持ちの先生方が多く,自分自身の未熟さを感じます。しかし,一方で現実社会では,「固定担任制に疑問を呈した方がいる」ということさえ認識されていないこともあります。それはひとえに,先生方が新たなことを学ぶ時間がないというのが大きな要因となっています。時間ができたら学ぶとは限りません。しかし,多くの先生方は子どもたちにより良くなってもらいたい,子どもたちのことが大好きな方ばかりです。そんな人たちが,子どもたちのためになることを知って行動しないわけがありません。だからこそ,先生方に学びの時間を確保することが大切なのです。先生方が新たに学び,行動することこそが,これからの時代を生きる子どもたちを育てる礎になると私は信じています。

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