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ぱちぱち踊る、初夏のご飯。

フライパンの中で、黄色い粒が躍る音。また今年も、夏がやってくるのだな。

近所のスーパーで、とうもろこしが一本あたり200円を切っていたので、早々に買って来ました。作るのは「とうもろこしの焼き飯」 我が家の夏の定番です。

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 今年中学生になった娘は、感覚過敏が強く、着る物はもとより、食べるものに関しても受け付けないものがたくさんあります。離乳食が始まった頃から、献立には散々悩まされて来ました。


 白いご飯と、もろきゅうとプチトマト、以上終わり。そんなメニューが何日続いても平気だった娘は、触感や匂い、味が苦手で食べられないものが、沢山あります。大人になるにつれ、それでも少しずつ食べられるものが増えてきてはいますが、本当に亀の歩み。

 お子様の定番メニューのから揚げを食べられるようになったのが、小学校2年生の頃。ステーキや焼き肉などのかたまり肉が食べられるようになったのは、4年生が終わる頃。生クリームのケーキに至っては5年生が終わる頃、ようやく1ピースを食べられるようになりました。


 そんな娘の偏食を無くそうという努力を、しなかったわけではないのだけれど、フルタイムで仕事をしつつ、朝夕と娘のために野菜を刻んだりすり下ろしたりの戦いは、私にはハードすぎました。その他の家事や資格取得のための勉強と、こなさなければならないタスクの多さに疲れ果て、保育園時代の割と早い段階で、食事に関して白旗を上げる事に決めました。

「食べてくれるだけ御の字」「外国人のお昼はリンゴとクラッカーなんだよ」という言葉が、当時も今も心のお守りです。大丈夫。食べてれば死なない。多分。

「豊かさ」には、色々な側面があるのだと思う。どちらも受け入れられると良いよね。

 思い返せば、母である私自身は好き嫌いのない「よい子」でした。
 野菜でも海藻でもキノコでも、二つ下の弟が食べられないものほど、よく食べる子でした。あれは頭で食べていたんだなと、今になるとわかります。好き嫌いが激しくて、食事の度に怒られていた弟のようにならないために。ダメな弟に比べてお姉ちゃんは良い子だね、と褒めてもらえるように、子供の私にとって好き嫌いなく食べる事はとても大切なことでした。


 結果、大概の子供が嫌うピーマンもブロッコリーも、好き嫌いなく食べられるようにはなったけれど、それは、ただ「食べられる」だけ。口の中に放り込んだら、がつがつ噛んで飲み下す。咀嚼? 何のこと? そんな私には、逆に「大好物」と言える食べ物がありません。今でも10回以上噛むことが気持ち悪くて出来ないので、味わっているとは言い難い。


 そんなわが身を振り返り、そして食べ物にこだわりのある娘の今を眺めると、本当に豊かな食生活ってなんだろうと、ふと思ったりするわけです。


 食べられる種類は少なくても、好きな物をじっくり咀嚼し味わっている娘と、何でも食べられるけど、味わうことも早々に飲み下してしまう私と、どちらが豊かな食事をしているのだろうって。
 食べる事は1日3回、1年で約1,000回。その千回を嫌いな物の克服に向けるのか、腹を満たすことに向けるのか、好きなものを味わうことに向けるのか。小さな積み重ねだけれど、振り返った時に感じる豊かさの総量はきっと、全然違ってくるのじゃないのかな。


だから、娘の好き嫌いを無理に克服しようとはやっぱり思えない。
私用のおかずを一口だけ味見をさせて、好きなものを見つけ出すための引き出しを、こっそり増やしてやろうと目論んだりはするけれど。いつか大人になって友人と食事に行って、あれ、私ってこれも食べられたんだって発見するのも、悪くはないんじゃないのかな。


 食べられるメニューが多い事だけが、食生活の豊かさのバロメーターではないよね。

 色々な味を受け入れられる豊かさも在れば、目の前の一品をじっくり味わう豊かさもある。そのどちらをも楽しめたなら、「食べる事の楽しさ」が、どっちかだけより少し深みを増す。そんな感じで良いんじゃないかな。そんな感じがいいな、と思う。

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 さて、そんな偏食家の娘が文句なしに食べる夏メニュー、トウモロコシの焼き飯。味付けは塩のみの、ごくごくシンプルな一品です。コツはできるだけ新鮮なトウモロコシを、弱めの強火で一気に炒めること。粒が踊ってフライパンの外へ飛んでいくのもご愛敬。

材料(2人前)

とうもろこし(生) 1本
油  大匙1
塩  適量(小さじ1/4くらい?) 

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・包丁でトウモロコシの粒を外したら、油を熱したフライパンに塩と一緒に入れて、中火~弱めの強火で一気に炒めます。

・色が濃くなって、ぱちぱち粒がはじけてきたらご飯を投入。

・手早く炒め合わせて、ご飯に少し焦げ目がついたら出来上がり。

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 以上。材料も手順もとってもシンプルです。
刻んだ玉ねぎとか、ベーコンとか、青じそとか、ほかの材料を混ぜるパターンも試してみたのですが、食べ比べてみると、他のものが入るとトウモロコシの味が負けてしまう。
よって我が家では、トウモロコシと塩だけのこのレシピが定番です。

 梅雨もはっきりしないまま、空はじわじわ夏の気配です。
漢方では、トウモロコシは「熱を取り、利尿により湿を排出する」効果があるそう。今の時期に何だかぴったりな気がしますよね。ぱちぱち跳ねる黄色い粒に、ぜひ夏を感じてみてください。

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