個人競技とチーム競技

私は今までにトレーナーまたは指導者として、たくさんのチームや選手と関わってきた。

競技も様々だが、そのほとんどは陸上競技とハンドボールだ。

10秒の為に

陸上競技というのは非常に奥深い。
短距離の100m走は、決められた距離をいかに速く走ることができるかを競う。

競技時間、約10秒。

陸上選手はこの10秒の為に様々なトレーニングをしている。
陸上非経験者から見ると陸上部の練習は、たくさん走ってるだけでつまらなそう…と思うだろう。

しかし、ただ走る練習なんてものはない。
一本一本意味をもって走っているのだ。

例えば、スプリントの位相別にアプローチしただけでもたくさんある。
フォワードスイングにしても、膝に意識をおくのと足部に意識をおくのとでは、股関節の屈曲角度が変わる。

その後の地面へのアプローチにしても、どこにどういう意識をおいて地面をキャッチしていくのかでスプリント速度は変化する。

意識をおくと話をしたが、実際にその動作を意識的にアウトプットさせる為には、その動作に類似した動きづくりやエクササイズをしてもらうことが必要になる。

生物史上最高傑作

指導者が
「ここを意識しなさい」
と伝えただけでは動作改善が難しいことがほとんどだ。
それは選手の中に、ここを意識するとはなんぞや?とわからないことが原因である。

私たち生物至上最高傑作である人間の運動ニューロンが、意識しただけで理想のイメージ通りに骨格筋をスムーズに動かして、複雑で複合的な各関節運動を実行できるのであれば、理想的なスプリント動作なんて二週間もあれば習得できることになる。

そんなことはまずありえない。

選手に意識させる為には動作の再現性があるエクササイズを事前にしておく必要がある。

陸上競技では当たり前だが、ハンドボールではどうだろうか。

ハンドボールの指導

ハンドボールは、走る・跳ぶ・投げる、そこにプラスして激しい身体接触が必要なハイブリッドな競技である。

その為、求められるスキルも必然的に多くなる。
練習を効率良くやらなければ時間がいくらあっても足りない。

ハンドボールの練習でよく目にする光景がある。
パスミスやキャッチミスに対して

「おい、ミスするな!くそぼけ!!」

これでミスはなくなるだろうか。
もちろんなくならない。

起きた問題に対する練習をしなければミスはなくならない。
実際の試合と同じテンポ、状況判断でパスの練習をするしかないのだ。

実はこれをやっているチームは少ない。

特に大学生にでもなると、パスはできて当たり前とされるので、軽視されがちだ。
それよりも、戦術的な練習や難しいことにほとんどの時間を使ってしまう。

戦術的な練習をしていても、そこで問題になるのは基礎的なスキルでのミス。
パスキャッチ、コンタクト、ステップ…。
そこに気付かない指導者はもうどうしようもない。
話を戻そう。

パス練習といえば、アップの中で判断することもなく、向かい合って自分のペースでボールを投げているだけである。

これはなんの練習にもならない(正確な投球動作を獲得する為に陸上競技のような細部へ意識をおいて投球しているのなら別だが)。

それを投球動作をするための準備だとしたら、パス練習を別でやるべきだ。

ミスは起こるべくして起きている。

「ミスするな」と檄を飛ばすのは指導者と言えるのだろうか。

「くそぼけ!」とは自分の練習メニューに対して言ってほしいものである。

選手に悪気はない。

もちろん、全てのハンドボールチームや指導者に言っているのではない。

実際に私が知っている指導者で、アップでパスのシチュエーションを試合に類似させている指導者はいる。
そういう類稀なる優秀な指導者は、
「ミスするな」
とは言わないものである。

カーネギーはこう言っている
「成功する人は、失敗から学び、別な方法でやり直す。」

失敗から学ぶのは選手だけじゃない。
指導者が失敗から学んで、指導内容を変化させていくことが重要なんだと私は考える。

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