無意識の思考を把握するために最低限知っておきたい特徴

前の記事で人の思考プロセスの全体像についてざっとお話しました。

端的にお話すると人には無意識を主とするシステム1と、
意識を主とするシステム2という2つの思考傾向が、
1つに統合されることで思考とその言動を生む。

故にその関係性を理解することが大事だというお話です。

この記事はその続編というか無意識と意識それぞれついて、
もっと深掘りしてその特徴を理解していくための第1回。

無意識の思考傾向について深掘りしていこうと思います。


無意識の思考傾向の概要


ではまず概要から。

無意識の思考傾向の特徴について大きく分けると以下のようになります。

  • 過去から現在に向かう傾向

  • 瞬間によって物事を捉える傾向

  • システムによる反応によって物事に対処する傾向


過去から現在に向かう傾向


まず無意識は過去から現在を考えることしかできません。

理想など望む未来から逆算して現在を捉えるのは意識だけができることで、
無意識には未来という考え方がそもそも存在しない。

それは無意識を生み出す脳という機能としてそうとしか言えないのですが、
これは遺伝子が原因だと考えてる。

人間に限らず生物は遺伝子という設計図によって、
個体差はあれど種ごとにどのような存在となるかが、
あらかじめある程度設計されています。

人間は進化の過程で意識を生み出す脳の部位を獲得しましたが、
それは動物的な脳の機能を失ったというわけではない。

依然として人間にも他の動物と同じように生来的に持つことになる、
生物としての特徴というものが存在する。

極論言えば意識を生み出す脳の部位というのもまた、
遺伝子によって設計された1つの特徴であり、
もしかしたら人には能動的な意思なんてないとも言える。

まあ、これは考えだすときりがないのでここでは置いて話を戻します。

つまり、人間は遺伝子という過去から引き継がれてきた特徴によって、
形作られる精神パターンとでも呼べるものが最初に存在し、
それが無意識に発現する思考傾向を生んでいるのだと解釈しています。

また、こういう生来的な特徴による思考傾向を別にしても、
これは後に詳しく話しますが無意識は過去に積み重ねてきたものから、
現在に対処しようとするのが基本的な思考指針としてある。

ようは、現在は過去の延長線上にあり過去にあったことが、
現在にも適用できなければならないと考えるのです。

故に、過去から外れた予想外、想定外の出来事がおきた時、
意識的に考えず無意識の思考に委ねているとほぼ必ず、
うまく対処できずに物事が悪い方向に進んでいったりします。

とりあえず無意識は基本として過去から現在に流れている、
そのように思考するということは覚えておくと良いでしょう。


瞬間によって物事を捉える傾向


それと同じぐらい大事な特徴が無意識は流れを捉えられない、
基本的には瞬間によって物事を捉え思考する傾向にあります。

先に過去から現在を考えると言いましたがこれもより正確には、
過去から現在までの流れで何かを捉えてるわけではなくて、
ある過去の瞬間から現在の瞬間に最適という捉え方をしているのです。

というのも、そもそも生物の脳内ではニューロンという神経細胞が、
相互に結びついて情報伝達を繰り返すことで思考する。

イメージとしては怒りという感情の情報がつまったニューロンがあり、
それが例えば自分に都合が悪い出来事の情報がつまったニューロンと、
相互に結びついていると自分に都合が悪くなったら怒るべき。

そんな思考を無意識的に行い言動に反映させるわけですね。

実際はここまで単純ではないんですがイメージとしては、
そのようなものとして捉えておくと良いと思います。

後はパブロフの犬なんかもわかりやすいでしょう。

ベルを鳴らしたら餌を与えることを繰り返すことによって、
ベルが鳴っただけでよだれを流すようになる。

これはベルの音という情報がつまったニューロンと、
餌を食べられるという情報がつまったニューロンが結びつき、
無意識に身体的な反応が表れることを示すわかりやすい実験です。

人間は意識があるだけ動物ほどスムーズに結びつけはできないのですが、
無意識の機能単体で見れば根本的には動物のものとあまり変わらない。

で、このニューロン数が多く人間には100億から1000億ほど、
脳内にあると考えられていて複雑な思考傾向はその相互作用による。

ですが、ニューロン1個自体にはそこまで多くの情報は、
詰まってない、詰められないと考えられる。

あくまでもニューロン同士の繋がりが思考の要であり、
無意識を生み出す脳の部位は意識のものと比べると、
そこまで多くのつながりが存在しない。

これは人間の無意識が主に危機察知等による生命の保全にあるからです。

危機に陥った時にあまりにも複雑な情報処理をしていては、
瞬間的に判断できず手遅れになって命を落とす可能性も高まる。

だから、なるべく簡潔にスピーディーに物事を判断し、
言動に反映させるために簡素化されているのだと考えられてます。

そのため、意識のように複数の情報を複雑に組み合わせ、
流れのように考えることができないのですね。

量は多いけど独立してることが多い瞬間的な情報を、
簡潔に素早く処理してるが故に無意識は、
基本的に物事を瞬間として捉え考えるのです。

システムによる反応によって物事に対処する傾向


ここまで過去から現在を考える特徴と、
瞬間で物事を捉えるという特徴。

2つのことについて話してきましたがこの2つが合わさり、
1つのシステムを形作ることが無意識の最大の特徴。

いずれ過去になる現在から何かしらの情報を取得し、
脳内にあらゆる情報を積み重ねていく。

そこから例えばある出来事に直面した時に過去の情報を参考に、
今何をすべきかをシステム化して瞬時に言動に反映させるのです。

故に、無意識単体ではシステム化されてない流動的な状況に、
対処することは不可能だと言っていい。

人間が仮に意識が疲れていてまったく働かない状態であっても、
少なからず無意識的に柔軟な対応ができてるように見えるのは、
それまでね意識的な思考が少なからず反映されているからです。

だけど、根本的に無意識はシステム化された指針を軸として、
思考し言動に反映させることしかできない。

だから、システム化されてうまくいってる時はスムーズに物事が進むけど、
時代や環境が変化しシステムが通じない箇所が出てくると、
どんどん思考と現実に齟齬が出てきて結果に悪影響を及ぼす。

加えて言うなら変化にうまく対応できる人とできない人の違いは、
システムが通用しなくなった時に即座に意識的な思考を働かせ、
また新たに無意識にシステムを構築していけるかどうかにある。

普段から意識を働かせて訓練しているのであればそれが容易になりますが、
訓練してないとか後は加齢などが原因で無意識に頼りっぱなしにして、
意識が衰えているとうまく新しいシステムを構築できない。

現実に対応できなくなるということが起こるのですね。


無意識とはあるがままを自然に受け入れていく思考


ここまで無意識の特徴についてざっとお話してきましたがようは、
ありのままを自然に受け入れる思考であると言って良いでしょう。

遺伝子という設計図によって生来的な特徴を持つ個体として生まれ、
環境から与えられるあらゆる情報を取り入れてそれらを組み合わせ、
その環境(自然)にスムーズに溶け込むための機能が無意識。

僕は動物的な本能という表現をよく使います。

人間以外の動物はこういった本能にのみよって思考し環境に流されるまま、
自らの生命を守ることを最上級の使命としておいて生きて死んでいく。

ですが、人間は成長の過程で脳という特徴を発達させていく、
そうして意識を生み出すことで本能とは別の思考を行っていく。

それについてはまた別の記事に解説を譲るとして、
とりあえずここで覚えておいてほしいのは無意識とは、
言わば環境に流され適応するための思考ということ。

故に、無意識の思考により過ぎると周囲に流されるままになる、
能動性を失い引いては人間が人間であるための性質を失う。

なので、無意識という思考が誰にでもあるということをまず自覚し、
それに流されないようにするにはどうすれば良いのか?

そういったことを考えていくのが大事だということは、
ぜひ意識してみてもらえればと思います。


では、今回はここまでです。
ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?