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#153 鳥肌が立った『光のアトリエ』アトリエ・デ・リュミエール(Ateliers des Lumières)体験


パリでアートといえば、ルーブル美術館が最優先されてしかりだろうけど‥‥
私は5年前に一日かけて回ったので、今回はアトリエ・デ・リュミエールのほうを夫にも推した。
娘夫婦 (もうすぐ) が、毎年展示が変わるたびに足を運んでいるデジタルプロダクションだ。
彼らから勧められなければ、きっと私は自分からこれを選んでいなかっただろうと思う。
その理由は、歳相応に言えば『電気っぽい』から。
そう言うと若者からは、エレクトリカルパレードじゃあるまいし‥‥と失笑を買いそうだが、画家 (巨匠) の絵をオーガニックと呼ぶなら、デジタルテクノロジーで壁面に映し出された時点で『無機質な』ものに変わるような気がしていた‥‥ でも娘が何度でも行ってしまう、その魅力を自分で知りたいと思ったのだ。

この日4人で向かったのは、Ateliers des Lumières。
パリでデジタルアートといえばここだ。

アトリエ・デ・リュミエール前で見上げた午前10時の空


今年の展示は後期印象派の画家セザンヌ。そしてショートプログラムは抽象絵画の創始者、カンディンスキーと続く。

入り口部分にあったデジタルポスターをパシャ。拡大するとフランス語か英語で読めます


会場の様子がこれ。雰囲気だけでも感じてもらえれば、と自分の携帯に残っていたビデオクリップをまとめてみた。
ビデオはセザンヌのショーの最初の部分から始まります。


次から次へと波のように押し寄せるセザンヌの絵画。
南仏の色。
それは明るく、そして暗く、思考を麻痺させるような原色の海が広がる。

額縁の中でしか見たことのなかった絵が、目の前の世界に変わる


セザンヌのポートレート写真と筆跡や‥‥

デッサン‥‥ 中央はセザンヌが好んで描いたというキューピットの彫像


かつては鋳造所だったこの建物内の展示スペースは、3300平方メートルにおよび、展示内容は毎年変わる。
ホールの真ん中に設置された小さな部屋では、360度に映し出されたアートを楽しめる。
広々とした空間で、誰もが思い思いにくつろいだり、歩き回りながらアートを楽しむ様子にも共有感覚が持てるので、観覧者の多さが決して『邪魔なもの』になってはいない。


上記の都市で同じ体験ができるようだ。計五か国、韓国にもソウルと済州島の2箇所あるらしい



少しの休憩があって、カンディンスキーの作品でショートプログラムが始まった。
カンディンスキーはロシア出身でありながら、後にドイツ、フランス両国の国籍を取得し、フランスがナチスに占領されてもなお、生涯フランスを離れなかったという。

壁とフロアーが一体で、自分とアートの境界がなくなる

後になって読んだのだが、カンディンスキー展は『抽象化のオデッセイ』というテーマだったらしい。
カンディンスキーの内なる宇宙の探索がテーマとされているのだとか。

音楽は初めからずっとクラシックで構成されていた。そのため、最後の曲のイントロが流れてきた時、にわかには信じがたかった‥‥それは、デイヴィッド・ボウイ (David Bowie) のスペースオデッセイ(Space Oddity) だったのだ。
この曲は私たち家族にとっては特別な曲。
娘は父の腕にしがみつき、父の肩に自分の頭を載せてじっと聴き入ったという。
家族がともに過ごした日々の思い出のたくさん詰まった曲‥‥

一か所に座っていた彼らから私だけ一人離れて聴いていたが、気持ちは繋がっていたと思う。アート作品のみならず、音楽とのコンビネーションはとにかく感情を揺り起こすのだ。私はひとつの場所にじっとしていることがどうしてもできなくて、あてもなく動き回るしかなかった。鳥肌の立っている私の撮ったビデオがこれだ。

後半、宇宙のような海の中のようなゆらゆらとした世界での、幼い子どもたちの楽しそうな姿が好きだった。



こうしてふたりの画家のデジタルショーが終わった。
興奮と感動で胸がいっぱいになる。
ルーブル美術館で有名なアート作品を何百点観てもこれだけ圧倒されなかった、その違いは何なのかといえば、『音楽の底力』だとしか言えない。

出口直前のミュージアムショップも充実しており、この建物を出る時の私は120%満たされていた。

この日したことといえば、公園でピクニックと昼寝、夜はブルゴーニュレストランでの食事。昼も夜もワインで乾杯したこと。
寝るまでに歩数カウンターは2万歩を超えていた。まあそのくらいだ。
夜はよく眠ったが、明け方に危険な夢を見て起きた。
一度覚醒した私の目の前にあらゆる形のものが動き回っている。これが、前日見た壁面いっぱいのデジタルアートの残像だとすぐに気づいたわけだが、20時間も経ってなおも残像を見たのにはびっくりした。

アトリエ・デ・リュミエール体験は私の感覚器官にはオーバーロードだったのだと思う。
生後半年くらいの赤ちゃんを連れているお父さんを見かけたが、大人の私でこうなのだ。あの赤ちゃんの感覚器官はちゃんと対処できただろうか‥‥などど気になってしまった。

自閉傾向のある子どもにも五感への刺激が大きすぎるかもしれない。
ノイズを軽減するヘッドフォンやサングラスなど、工夫できる対処法があるかもしれないと思ったこともついでに触れておきたい。


アトリエ・デ・リュミエール。素敵なレストランやカフェも多いマレ区にあります。
チケットは事前にここから買いましょう。


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