#114 イギリスのおばあちゃんの編み物で温まる町
隣り町。
小さな集落の入り口でなんだかすごいものを見かけてしまった。
大変失礼ではあるが、
ギョッとして、そして笑みがこぼれる、そんな光景。
ここまでしなくても‥‥と言いそうになったが
「あ、かさじぞうみたい!」とも思った。
かさじぞうは、おじいさんが雪の中に立つお地蔵さん達を可哀そうに思い、持っていた売り物の傘を頭に被せてあげて、さいごにひとつ足りなくて、自分の頬かむりまで与えた、そんな優しさの話だ。
英国版かさじぞう
ああ、それに気づいたらこれをいそいそと編んだであろう、おばあちゃんの姿が目に浮かんだ。
なぜ「おばあちゃん」だと限定できるのかと訊かれたら、「これまでの経験で‥‥」としか言いようがない。
村の小さなホールのクラフトフェアというのがある。手作りのケーキやジャムが必ず買えるような場所だ。そこにはおばあちゃんたちが自分で編んだものを並べて、にこにこ座っていらっしゃる。
一昨年のクリスマス前、私が買わずにおれなかったのはこれ。
おばあちゃんの手編みのサンタクロース
おばあちゃんがご自分で編んだものを100円くらいで売っていた。
いくつも並んでいるあまりのキュートさに、ひとつ買った。
手間ひまかけてそんな値段で売るなんてありえないのだけれど、彼女たちの、「利益なんて考えてない」ところがカッコいいのだ。
でもなんだかサンタさんの口ひげが赤ちゃんのスタイにしか見えない‥‥
じっと見てると、なんだかピグレットのようにも見えてくる‥‥
それで、口ひげだけそうっとはずして、位置をつけ変えたら、ずっとサンタらしくなったと思っている。おばあちゃんと私のコラボと呼ぼう。
この町は川が海に流れ出る場所にあり、年々ホリデー用に建てられた小洒落た建物が目に付くようになってきた。都会から訪れる人も多いようだ。
ここには、洗練されたものと逆に温かさのあるものがいい感じで入り混じっている。
ふと目をやると‥‥
左側のお家のリースはもしかすると手編みでは?
あ、やっぱりそう。
Snowmenのリース
色づかいもドアの色とすごくマッチしてる。
Twelve Days of Christmas
という、クリスマスに欠かせない歌がある。
その歌詞のなかで何度も繰り返される、
有名な一行がある。
And a partridge (ヤマウズラ) in a pear tree (洋梨の木) ~♫
そのクリスマスキャロルを歌うねずみの聖歌隊の可愛らしさよ。
このお家の誰かが、自分の編んだ世界で、道行く人に温かさを届けてくれている。
母の靴下
なんだか日本の母のことを思い出した。
母は80を超えて、千何百足を超える靴下を編み続けている。
流行り病で外との接触が断たれたような時期、毛糸を持って来てくださる人がなくなった。
そしてとうとう毛糸が尽きてからは、何か月も編んでいなかった。
母は、毛糸があれば編む。なければ編まない。
代わりに図書館から本を借りて読む。
それだけのことだ。
毛糸がなくてもなんのストレスもない。あっぱれだ。
母はさぞかし手持ち無沙汰なことだろう、ボケやしないだろうか‥‥とイギリスからあれこれ案じた自分を恥じたくなる。
先日、毛糸をいただいてまた編んでいると言った母の声は弾んでいた。
(蛇足)日本では編み物をニッティングと言うことが多い。
イングリッシュ・ワンポイント・レッスンのようになるが、
Knitting (ニッティング) は棒針編みのことであり、
かぎ針編みは、crochet (クロシェ) という。
上の画像で言えば、ニッティング作品は、ポストの帽子とマフラー、サンタクロース、ねずみの聖歌隊であり、
クロシェ作品は雪だるまのリース、洋梨、そして我が母の靴下ということになる。
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