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今さら訊けない棋戦の話――連載「棋士、AI、その他の話」第33回

 名人戦が終結した。豊島九段の奮戦は凄まじく、絶対王者たる藤井名人にも危ない局面が多々あった。特に第一局は感動的な名局として語り継がれるだろう。
 さて、この「名人戦」なるもの、どういった仕組みかご存じだろうか。
 名人戦だけではない。棋界にはタイトル戦が8つあり、それぞれ条件設定が異なっている。それを完璧に把握している者は稀だろう。そこで今回は、各棋戦の特徴についてざっくり語っていく。
 その前に、棋戦の序列について述べておこう。棋戦の格には順番があり、基本的には賞金の額によって決まる。現在は竜王戦→名人戦→王位戦→叡王戦→王座戦→棋王戦→王将戦→棋聖戦の順となっている。なおここではタイトル戦にのみ絞っている。
 では、序列順に。

竜王戦

・予選:組別トーナメント制、5時間
・本戦:変則トーナメント制、5時間
・タイトル戦:7番勝負、2日制、8時間
・主催:読売新聞社、日本将棋連盟

 竜王戦の特色は6組に分かれる予選方式である。新人はまず6組からスタートし、トーナメントで上位に入ると1つ上の組に昇級する。また連敗を喫すると1つ降級する。リーグ戦である名人戦に比べて入れ替わりが激しく、1組に在籍し続けるのは至難の業と言われる。予選通過条件は組によって異なり、1組は5名、2組は2名、3〜6組は1名が通過する。
 挑戦者の決定は決勝トーナメントにより行われる。ただし通常のトーナメントとは異なり、パラマス方式が採用されている。これは組が上の者が有利になるよう極端に山を偏らせたもので、5・6組優勝者が挑戦権を得るのに6勝必要なのに対して1組優勝者は2勝で得られる。これはもちろん不公平なのではなく、1組まで勝ち上ってきた実績、レベルの高い予選で優勝した実力を評価するための工夫である。また最終戦は挑戦者決定三番勝負となっているところも独自である。
 6組を優勝する者は大抵活きの良い若手だが、それが決勝トーナメントによりを勝ち進んでいく課程を「竜王戦チャレンジ」「○○(名前)チャレンジ」等と呼ぶこともある。1戦ごとの対局料も莫大であり、大変に大きなチャンスではあるものの当然ながら道は険しく、特に1組在籍者との初戦、いわゆる「1組の壁」を突破できる者は少ない。ただ昨年は例外であり、5組優勝者伊藤匠六段(当時)はなんと最下層から6連勝して挑戦者となった。

名人戦

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