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隠蔽捜査シリーズ最新刊は相変わらず組織人にとってのファンタジー作品だった(大好きなやつ)

隠蔽捜査シリーズが、というか竜崎伸也という存在は組織人にとってのファンタジーのようなものです。いたら会ってみたいし、それはそれで面倒なような気もするし、まああんなに上手く行くのは小説だからだよね…といったお決まりの感動と諦めを楽しむエンタテイメント。

で、ファンタジー小説の良し悪しというのは、小説世界の広がりや奥深さをどこまで細かく作ってあるかが重要だと思うのですよ。隠蔽捜査の~.5シリーズはまさにその奥深さ部分を作っている存在です。

今回は、大森署から竜崎が異動になったあとの関係者それぞれの動きを追ってくれた短編集。家族、竜崎との出会いによって変わった部下や周辺の人たちのその後やあの時が描かれています。

実際にこんなに人の気持ちは変わらないとは思うけれど、それでも「もし」の可能性が高いのであれば、竜崎のように生きてみたいなと考えるのです。ま、たぶん大火傷することになるんだろうけど。

特に印象に残ったのは、女性二人。奥さんの冴子さんと新署長でした。冴子さんに至ってはどんどん強く逞しくなっていて、「協調性はあるつもりだ」と淡々と言う竜崎に「協調性という言葉の意味を、ちゃんと調べたほうがいいわよ」と言い返すシーンは大好きです。

新署長、出番は少ないながら大物ぶりを発揮しているので読むかどうか悩んでいた『署長シンドローム』は絶対読む、に決定!


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