見出し画像

昨年に続いてミステリベストを席捲しちゃうんじゃないの、これ。『可燃物』

米澤さんの本は全部読んでいます!という読者ではないので、何を読んでも「あ、この感じは米澤さんだ」というものを見つけられないままにいます。そしてその気持ちは昨年の『黒牢城』でより強くなったとも言え。。。
昨年のミステリ各賞を総ナメし、直木賞を獲ったあとの新作とくれば読者の側の期待値はどうしても高くなりますよね。がっかりしたらその時はその時だ!と思って帰省のお供に持っていきました。

それほどの厚みのない本でしたが、唸らされること数回。いやー、昨年に続いてミステリベストを席捲しちゃうんじゃないのかしら、これ。

作品は連作短編で、寡黙な警部が本格的な謎解きに挑むという内容です。舞台は群馬県警。
群馬県警というと、どうしても職場が緊張感に溢れていて、なんとなくメンバー同士がケンカを始めるんじゃないかと思っちゃうんですよね。それくらい『陰の季節』(横山秀夫さんの小説の影響で勝手なイメージを定着させちゃってます。あちらもD県警って伏せ字だけどなんとなく群馬県警。で横山さんの小説=登場人物たちがバチバチやりがち、というイメージがミックスされているという状態)を思いだし「米澤さんっぽさとは何か」などと考えてしまったわけです。

”本格ミステリ”の煽りが効き過ぎかもしれません。別に密室が現れるわけでも、吹雪の山荘が出てくるわけでもなく、目の前で展開されるのは放火事件や傷害事件、遭難、人質事件など日常目にしがちな事件です。だからこそ、「ここに、こんな事件を仕込んだか!!」という驚きが倍増するんですよ。いやはや。
どの話にも割と驚かされましたが、個人的には最終話の『本物か』がお気に入りです。こんな人質事件を創り出すとはねえ…感動。

暑い夏、ちょこちょこ読むには抜群の作品ではないかと思います。要するに面白かったので、ぜひ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?