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同時代を生きてきた駒子に会えた『1(ONE)』


入社して間もない頃、とにかく出版社の名前や本の名前を覚えなきゃいけない、と、やっていたのが棚を凝視するくらい見ること。そもそも、本の仕事をしよう、と決めたきっかけの1冊が北村薫の『スキップ』だったので、文芸書の「き」のあたりには立ち止まる時間が長くなるんですよ。北村薫の新作出てないかなー…なんて。当時は日常の謎流行の時代だったので、その近所にあった「かのうともこ」とか「きたもりこう」とかを順々に読んでいくことになりました。で、出会ったのが『ななつのこ』


本好きの短大生の駒子ちゃんと、彼女が惚れ込んだ作家のやりとりで身近にある謎が解かれていくのがこのシリーズでした。二十歳前の、みずみずしい、そしてどこか不安定なものを感じさせる主人公の姿に共感を感じることも多く、記憶に残る作品でした。
その後、このシリーズは『魔法飛行』『スペース』に続きます。

第3作発売が04年でしたから、そこから20年ですよ!

加納さんといえば、『月曜日の水玉模様』でOLあるあるを書き、『七人の敵がいる』ではPTA活動の憂鬱を描き…あ、考えてみたらめちゃくちゃ自分の人生に寄り添ってるテーマ続きだわ。
と、みずみずしい感性とかからは遠ざかってすれちゃってるんじゃないかとかいらぬ心配をしたもんです。

結論から言うと、それらは杞憂でした。
主人公とともに年を重ねてきた加納さんだから描けた”駒子”がそこにいて、旧ファンとしては胸熱です。
さらに、今回主人公を超える主人公が犬たち。もうこれが可愛いし、愛おしいし、全国の犬好きにはぜひ読んでほしい本です。
シリーズ作の最新作と打ち出されているので、初めて存在を知った方には手に取りづらい本なのかもしれません。でも、これを1作目として読んでも全く問題ないと思います。スターウォーズだってそうだし。

日常には謎があふれていて、ものによっては哀しい裏側の事情もあったりします。そんな裏側を暴露するということが謎解きではなく、そこにあった問題を解決して、自分たちも糧にしていくことが「日常の謎」を解く本質なのかも、とそんなことを考えています。


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