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【映画レビュー】『マイ・インターン』:こんな人になれたら! こんな関係であれたら!

 「うまくいかなくて、つらいときに観るといい映画」として、複数の方から推薦してもらったのがこの映画だった。それまでお恥ずかしながら、この映画を知らなかったである。観てよかった!

こんな人になれたらいいな!

 「マイインターン」というタイトルから、てっきり、アン・ハサウェイ演じる若い女性(ジュールズ)が、ロバート・デ・ニーロ演じる高齢の男性(ベン)のインターンになる話かと勘違いしていた。実際はその逆であった。
 いろんな方がすでに言っているが、何しろ、デ・ニーロ演じる70歳のベンがステキなのである。
 気になる人のことを思いながらも、深く干渉せず、じっと見守る。でも、相手がうまくいき、幸せになることを心から願っている。私なら、さもすると、他人のために何かをするときに、自分のことをよく思ってほしい、あわよくば好きになってほしいなどというよこしまな考えを抱いたり、見返りを求めたりしてしまいそうだが、ベンは違う。
 高齢になれば、そういう境地に達せられるものなのだろうか……。いや高齢だからそうなれるとは言えないはずだ。やっぱり、そういうステキな個性をもつキャラクターだからだろう。だから、ベンみたいになりたいなあと思えてくるのだ。
 一方、アン・ハサウェイ演じる若い女性社長ジュールズもステキである。事業を成り立たせるために必死だし、余裕がなくて、人との接し方が雑になってしまう部分もあるが、社長だからと言って偉そうじゃない。威張っていない。権力を笠に着たりしない。他の人と対等に接し、人のことを見下したりしない。そこがいいなと思った。
 だからこそ、インターンであるベンに素直に心を開き、深く信頼し合える関係になれたのだろう。

こんな関係になれたらいいな!

 ナンシー・マイヤーズ監督は、この作品では、恋愛を取り上げないようにしたと話していた。
 確かに、恋愛にならない関係って、いいなと思う。獲物を狙うようなギラギラした欲望とか打算とか、そういうのがないのは、なんだかほっとするし、純粋な気分になる。
 でも、大人になると、恋愛関係にない人と深く関わることは難しい。学生時代なら友達とずっと一緒にいるような深い関わりもできたりするが、大人はそうはいかない。
 大人になってからは、仕事を一緒にしている人たちが、一番長く一緒に過ごす人たちであることが多い。ただ、仕事仲間と深い関わりができるのは、よほど恵まれた場合ではないだろうか。
 この作品での、ベンとジュールズの関係は、恋愛関係でもなく、家族でもないのに、それでいて信頼し合い、お互いのことを心から真剣に考えている。現実にはそういうことは非常に難しいと思うので、逆にこの映画の二人の関係に惹かれてしまう。いいなあと思う。

理想かもしれないけど

 「こんな人になれたら」「こんな関係を他人と結ぶことができたら」と、うらやましい気持ちで胸がいっぱいになった。現実離れした理想かもしれないし、死ぬまでその理想にたどり着くことは難しいかもしれない。
 それでも、映画というものを通して、人間の理想の姿や形を胸に抱くことができたのは幸せである。真っ暗な闇の中に光が差し込んでくるようで、前向きな気持ちになれる。
 そんなことができるのも、映画のすばらしさであり、映画が持つすごい力だと思う。


 みんなが見ている映画について語るのは、ちょっと勇気がいりますが、反応をもらいやすかったりします。こうした駄文をきっかけに、感想を交わし合ったりする機会が生まれたりしたらいいなと思います。
 それにしても、自分が知らない良い作品が、きっとまだまだたくさんあるのだろうな…… 

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