地味な鱒、の話。

スーパーの魚コーナーで、塩サケと塩マスが並んでいたら、どちらを買うか。

木村衣有子さんの著書「あのとき食べた、海老の尻尾」の中に鱒の話があって。淡水魚の鱒が、味も見た目も地味だというくだりで妙に納得したことがある。鱒は、自分自身も内陸育ちで、子どもの頃にさんざん食べた定番食材。でも、大人になって、スーパーでは塩マスよりも塩サケの売り場が広いこと、あるいは、塩マスそのものを置いていない店も結構多いと知った。そして、いつの間にか、夕食も朝食も鱒を食べる機会がすっかりなくなった頃に、この本で、私が忘れかけていた鱒を、木村さんは贔屓にしていると綴っていた。そして、最後にこれまた地味な話として紹介していた浜田廣介の「ますとおじいさん」という童話。そりゃあ、気になって。読んでみれば確かに木村さんがいう通り地味だけれども、よい話。なんだろう、暮らしの終い方について考えるよい話でした。

スーパーに並ぶ鱒を見つけると、時々この話を思い出し、塩サケじゃなくて塩マスを買おうかな、という気分になるんです。



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