”本音”と”建前”、そして「"本質"は何か?」

読者の中には経営層の方もいらっしゃれば、一般職層という立場で私の拙い文章を読んでくださっている方もいらっしゃると思います。
私は福祉経営コンサルタントという立場上、経営層(施設長、事務長等)やリーダー層(部長、課長、主任クラス等)と今後の法人経営の方向性や戦略について膝を詰めて意見交換を行ったり、具体的な行動計画(事業計画書)へ落とし込む支援などを行っています。

"本音"と"建前"文化

案件によっては、経営層を抜きにした次世代を担うリーダー層で構成されるワーキングチームの支援を行う場合もあります。
その場合、組織や経営層に対する不平不満という"本音"と、それでも法人職員として利用者支援や介護サービスを提供しなければならない"建前"をうまく使い分けなければならない職員さんのジレンマが伝わってくることがあります。

私自身、組織における”心理的安全性”とよばれる自分自身を隠すことに極力労力を費やすことを辞めてしまったので、組織に対する不平不満があったとしても、”本音”と”建前”はあまり区別はしなくなりました(建設的なフィードバックを心がけています。)
その組織にいつづけても自己成長が難しいなぁと思えば、転職すれば良いと思ってしまいますし、みんなして不平不満を言ったところで、自分自身が具体的な改善行動を起こさなければ単なるカタルシスで終わってしまいます。

特に日本人は空気を読むというか、”本音”と”建前”を使い分けることに美徳を感じる文化を重んじているため、顔は笑っていても、心は煮えくり返っているということも度々あるわけです(そういう難しい立ち居振る舞いは勘弁してほしいです)。
経営層に対して不平不満があって、会議の際などにそれを指摘したことで炎上し、組織にいずらくなってしまうのであれば、下を向いて何も言わずに黙って時間が過ぎる方がよいという心理が働くのも納得がいきます。
しかしその一方で経営層からすると、「一般職層は何を考えているのか分からない」という評価(捉え方)になってしまい、お互いに目に見えない溝が深まってしまうわけです。

確かに、駆け引きを行う上では、"本音"と"建て前"をうまく使い分ける方が相手にも不快感を与えず、こちらが意図した成果(結果)をもたらしてくれるかもしれません。
しかし、組織体系はヒエラルキー型からフラット化し、組織に依存する職員は増すなか、いかに組織における"心理的安全性"を担保できるかは組織づくりにおける最重要ファクターの一つとなっています。
だからこそ”本音”と”建て前"を使い分けつつ、その中から「"本質"は何か?」を問いていくことが大事です。

「"本質"は何か?」

"本質"とは、「そのものとして欠くことができない、最も大事な根本の性質・要素。」を指し、"本音"と"建前"の間にあるギャップや曖昧さを解消するため要因といえます。
経営層の言葉尻ではぐらかされた、ぼやっとしたよく分からない状態でごまかされるのではなく、自分自身が納得いく(理解できる)まで確認する習慣をつけなければ、「"本質"は何か?」と考えることにつながりません(「分からない」ことを「分からない」まま放置することほど、後々リスクになる可能性を秘めています)。

冒頭に書いたように、私の立場上、経営層(施設長、事務長等)とも、リーダー層(部長、課長、主任クラス等)とも関係構築したうえで、コンサルテーションする必要があります。
その際、経営層型の立場でリーダー層を否定することもありませんし、その逆もありません(客観的にみてどうかというスタンスです)。
法人共通のゴールに向かって、経営層もリーダー層も同じ方向性を向けるよう組織の変革を促すことが、第三者性を担保した客観的な立場から求められる"解(=本質)"という認識を持っています。
そのため、リーダー層のワーキングチームでは、「きれいごとは必要ない」旨を冒頭に伝えるようにしています。
なぜなら言葉遊びのきれいごとは誰でもできてしまうからです(「仏作って魂入れず」では、コンサルテーションの意味がありません)。
いかにに”本音”と”建前”を引き出し、ゴールに向かうために必要な「"本質”は何か?』という問いを投げかけ、ゴールまで伴走することが我々コンサルタントの役割ではないかと考えています。

問いかけを通したリーダー層育成

ワーキングチームを重ねていくなかで職員から”本音”が漏れ聞こえしてくれば、関係性が構築された証です。
「経営層には言えないけど、管理人(筆者)には伝えられる"本音"」が出てくるということは、それだけお互いの信頼関係が構築され、リーダー層からすれば、「我々の味方になってくれる(組織に対する不平不満を一緒に解決するための力を貸してくれるかもしれない)」と思っていただけたと捉えています。
リーダー層を中心としたワーキングチームでは、漏れ聞こえしてきた"本音"から「"本質"は何か?」と問いかけながら、一緒にゴールを目指していく支援を通して、リーダー層の育成に取り組んでいます。

例えば、冒頭の新しい理念に見直すワーキングチームでは、現行の経営理念についてマンダラチャートをアレンジしたフレームワークで細分化し、KJ法を用いて「個人の尊重」「サービスの質の向上」「地域福祉」「働きやすい職場づくり」などのキーワードが抽出できました。
その進行はワーキングチームメンバーからリーダーを輩出し、皆で作り上げるプロセスを通じて、達成感を感じてもらえるようにしました。

ある法人では、上記のようにリーダー層に内部講師を務めてもらい、これまで伝えてきたことの実践報告という形で、部下に話をする機会を設けています。
このようなリーダー層の育成の成果は、その下位層に伝播し、組織全体の大きな流れを生むことにつながります。
そのためには、"本音"と"建前"を使い分けなければならない場面はあると思いますが、そこから「"本質"は何か?」を深め合うことが組織づくりや意識改革には必要です。

管理人




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