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#9 華麗な墓原女陰あらわに村眠り 兜太

「金子兜太句集」の中で、よく知られた作品である。

華麗な墓原女陰あらわに村眠り 金子兜太

 別に難解な句だとは思わない。
 それなら、句意を書けと云われると、困ってしまう。
 
 死者のためには「華麗な墓原」がある村のことである。
 疲れ果てて貧弱に荒くれた男達を、女達は身体を開いて抱え込む。
 唾と汗と体液が滴りまぐわい、果てれば、二人で一枚の煎餅布団にくるまって眠る。
 眠る、眠る村はつかぬ間の静けさに。
 
 句意まがいではあるが思いつくのは、こんなことか。
 先祖代々、繰り返されてきた、貧しさに淫らさ、・・・、案外、これが日本の原風景の一面であったのかも知れない。

 というようなことを書いてはみたが、なんだか嘘をつかれている様な気がしないでもない、兜太さんの句を読んでいると、大法螺を吹かれているような感じがする場合がある。でも、そういうスケール感が、魅力なのだ。作者の肉声が聞こえてくるような気がする。
   
 まあ、小生の感性はもはや萎びきっているので、・・・、お許しを。