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ため息俳句68 同時代

 昨夜からニュースで黄砂の警告があった、そして今朝はJアラート、やれやれまたかと思いつつも一瞬の緊張、それでも、警戒は北海道、ちょいと遠いので、まだ落ちついていたが、今朝は何云っても、落下予想が領土の内なのだ。
 頑丈な建物に至急避難せよとテレビは繰り返す。もしもこの地が標的だったならば、頑丈な建物なんてどこにある。ミサイル攻撃の威力は、ウクライナからの報道でよくよく見ている。頑丈といったって、どれほどの効果があるのだろう、とか。北海道民に皆さんには、さぞかし緊張されたことだろうか、気の毒この上ない。その後、またもやのピント外れであったと修正されたが、・・・。
 そのJアラートが発令中に、保育園の年長さんになったばかりの孫から、アレクサ経由でテレビ電話の呼び出しである。彼女には今年同じ保育園に入園した妹がいる。その妹と一緒に2チャンネルEテレの「おかあさんといっしょ」を観ていたが、Jアラートで中断されたのでジジとババに朝の挨拶をしようと思ったのだそうだ。まだ登園の時間までには間があるのだ。
 その年長の孫が、「バクダン、落ちてくるの?」と大声で尋ねてきた。「なんで、そんなことするの?」と畳みかけて来る。
 ジイは、とっさに言葉が出ない。
 とりあえず、「バクダンは、そっちの方は落ちてこないよ、心配ないよ」、こっちも大声で云う。
 「世界には、まだどこの国にも仲良くできない他の国があってネ、その国の一つがバクダン飛ばす練習をしているのだよ。こまるねえ、はやく、バクダンなんて一個もない世界になってくれないと、イヤだネ」
 そんなことを、言ってみたら、「知ってる、知ってる、ケンカしてんでしょ」と答えてきた。
 おいおい、どこまで知ってるのかと、こちらがちょっと慌てていると、追っかけるように、「ジイ、死んじゃうの、いつ?」と聞いてきた。
 またまた、朝っぱらから何を言い出すやらと、思いつつ、「うーん、人は生まれる時も死ぬ時も、自分ではわからないよ。もうしばらくは、死んだりしないと、思うよ、たぶん。」
 そんな言葉で、ごまかすと、聞いたか聞かなかったか?孫の方も「わー」と、大はしゃぎで、妹にちょっかいをしはじめた。
 それからしばらく、子供相手の世間話で大笑いして、登園の支度できたよーの母親の一声でバイバイとなった。
 ジイいつ死ぬのというのは、数日前の夕方の会話で、確かなんかの拍子で、憎まれ口を云う孫に、「ジイ、もう年寄りだから、いつ死んじゃうかも、わかんないよー、だからね、おじいちゃんは優しくしなければ、いけないよ」とか、言ったなあと、先ほど思い出した。ふざけても、子供相手には、うかつなことを云うべきでないのだと、少し反省した。
 黄砂のことも知っていた。「アレルギーのある人は気を付けるんだよね」、保育園の先生から聞いてきたのだ。ずっと、マスクをしているから平気だよという。
 よくも悪しくも世界はさまざまに動いていて、年長の孫も、3歳の孫も、その世界ではジイの「自分」も時を同じく生きているのだ。いくら幼いとしても、同時代人としての礼儀を意識せんといけないと、思うのだった。


幼子が歩いて来春爺も行く