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ため息俳句 涎

 暖かくなった。
 それなのに、まだ炬燵に抱かれている午後。
 ぬくぬくが過ぎてむしむしに近い。炬燵の中で、遠赤外線が直に照射されている足首辺りが、ひりひりと火照りだすようだが、その無意味に熱過ぎているということに執着している感じが捨てがたい。
 足首は、ズボンの裾と靴下の狭間で、露出しているのだ。そこにちょうど焚火の前にいるような熱痛さを感じて、たまらなく気怠くていい気分になる。
 熱線に炙られて気持ちいいとは、変態的だといわれようが・・・。

 その内、寝落ちしたらしい。
 だらしなく。
 涎。
 目覚めて、
 気づいて、
 手の甲で口の周りを弄った。

とろとろと眠りの沼は春炬燵

目醒むれば耳朶みみたぶあたりの湿りかな

涎して午睡の蝶はいずくへか

昼寝人春なら青きしじみてふ