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「きれいごと」とはなんだったのか

「おかえりモネ」を観た。後半に少し展開を急がされてしまったような印象はあったが、もともとファンだった清原果耶を中心に素晴らしい演者による素晴らしいドラマだった。コロナでの短縮がなければ、安達奈緒子氏も思った通りにもっとじっくり丁寧な脚本が書けたのではないかと思うと残念だが、そこは今から言っても仕方がない。関わった人全員の次回作に期待したい。 ひとつだけ、気になった点があった。モネが地元に帰り、永瀬廉演じる亮と話すシーンだ。モネが地元の役に立つために帰ってきたことについて、亮

    • 推し、燃ゆ 感想 ネタバレあり

      昔から自分はミーハーだと思っていたが、バイト前にふらりと寄った本屋で芥川賞を取った「推し、燃ゆ」を衝動的に買ってしまうほどだとは思っていなかった。本は本棚の幅を取らない文庫に限ると思っていたし、芥川賞を取るような純文学はあまり好きではなかったが、今思えばタイトルと著者が同い年だということにも惹かれてだろうか、引き寄せられるようにレジに並んでいた。 今日のバイトは仕事が早く終わり、上司も早く帰ったのでせっかくだからと読み始めたら止まらなかった。読み終えて目を上げると、ちょうど

      • 透明なゆりかご5話 感想

        ドラマ「透明なゆりかご」を観た。評判がとても良かったので気になってはいたが、これほど惹かれるとは思わなかった。あらすじはだいたい以下の通り。 舞台は1997年夏。青田アオイは看護学校に通っており、夏休みに産婦人科の病院でバイトをすることになる。アオイはひと夏の経験を通して、「いのちとは何か?」について考えていくことになる。 一回ごとにゲストがいて、完全な一話完結ではないがだいたいそのように進んでいく。各話秀逸で、悲しい結末を迎える話も多いのだが、主演の清原果耶の演技と演出

        • この割れ切った世界の片側から

          小学生の頃、斎藤佑樹に憧れて早稲田実業に行きたいと言った。親は「それなら受験しなきゃね」と言って、中学受験塾に入れてくれた。単純に息子の希望を叶えてやりたいと思ってくれたのか、もともと中学受験をさせるつもりだったのかはわからない。結果的には早稲田実業には行かず、近くの私立中高一貫校に通うことになった。 中学に入ると、自分は生徒の中では「どちらかというと金持ちでない」部類だった。月に5万近くお小遣いをもらっている友達もいたし、中一から東大受験塾に通っている人もいた。それをただ

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