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「性風俗営業の人権侵害性」中里見 博さんの論文を読む


AVの影響がある、というとギャオオン!になる人たちが沢山いる

AVをみて、影響を受けている男性はたくさんいる、とツイートしたら影響なんてない!という反論がたくさんついたので、影響はあるというのをまとめてお伝えしよう。

https://www.lib.fukushima-u.ac.jp/repo/repository/fukuro/R000004073/2-419.pdf

こちらはタイトルにもある『「性風俗営業の人権侵害性」_____「性行類似行為」をさせる営業等の違法性に関する諸判決______________』中里見博さんの論文から。

売春防止法と、そこをすり抜けたものについて、実は有害性を問えるのではないか、ということが指摘されている。

すなわち、売春防止法の立法 趣旨がいうように「性交」を行なう売春がその人の尊厳を害し性道徳や社会の 善良な風俗に反するというのなら、「性交類似行為」を行なう売春に類似の行為も同様な評価を受けるべきではないか。性交を行なう売春のそうした人権侵害性と反道徳性が、売春業者による売春助長行為を処罰する違法性の根拠であるならば、性交類似行為を行なう売春類似行為を助長する業者の行為もまた処罰されるべきではないのか。  実はこのような考えは、あまり知られていないが、判例上確立されたもので ある。すなわち手淫や口淫などの性交類似行為を行なう「売春類似行為」 は、売春との問に実質的な違いは認められないのであるから、性交をさせる 「売春」と同様に女性の人としての尊厳を害し、性道徳に反するものである。

『「性風俗営業の人権侵害性」____「性行類似行為」をさせる営業等の違法性に関する諸判決_____________』中里見博 92P〜93P


スカウトなど女性を「売春類似行為」へのあっせん、紹介などをした場合、違法であり刑罰の対象である。

あまり知られていないようなので同論文の注釈から紹介したい。

10 職業安定法第63条「次の各号のいずれかに該当する者は、これを1年以上10年  以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金に処する。一 (略)、二 公衆衛  生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介、労働者の募集若し  くは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者」。労働者派遣法第58条  「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で労働者派遣をした者は、  1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金に処する」。

『「性風俗営業の人権侵害性」____「性行類似行為」をさせる営業等の違法性に関する諸判決_____________』中里見博 92P

13 生殖器官をあからさまに写し出した性表現物の頒布行為等は、刑法第175条  「わいせつ物頒布罪」に問われる(「わいせつな文書、図画その他の物を頒布し、 販売し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役又は250万円以下の罰金若し  くは科料に処する。販売の目的でこれらの物を所持した者も、同様とする」)。

『「性風俗営業の人権侵害性」____「性行類似行為」をさせる営業等の違法性に関する諸判決_____________』中里見博 92P

「わいせつ物頒布罪」に問われる。ということは、実はAV動画、画像の販売は違法なのでは?と思うのだがなぜか堂々と行われている。
それはなぜなのか。
細切れにされているから、というのが自分の見解だ。
AVを作成した会社は作っただけ。売った会社は売っただけ。
AV女優、AV男優は”特定の相手”と性行為、性行類似行為をしただけ・・・だから、性売買行為にはあたらない。
「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務」にはあたらないという屁理屈だ。
しかし、それらのAV動画が「あなたは18歳上ですか?」というのにYESとさえ答えればいくらでもみることができるし、誘導として短い動画が流布されていたりもする。
ネット上でいくらでも、女性を性加害することを肯定する表現がみられる。
それを真似して女性に性加害する者もいれば、「似たことができるのでは?女性は最初は嫌がっていても最後は嫌がっていないし、逮捕されていないからこの動画があるのだろうし」と、真似をしてしまう男性を量産している。
これらは、ネットAV動画、女性加害動画を肯定する状態の中で、「こんなのをしている人がたくさんいるから、自分もやっても大丈夫だろう、逮捕されないだろう」という誤学習をさせているといえる。
ちょうど昭和の時代に、大衆紙が「痴漢は娯楽」だと特集を組んだり、盗撮の写真のレポを載せていたりしたために「痴漢をしてもいい」と勘違いした男性たちが大量にでたのと同じ仕組みだ。

人は、みているものに必ず影響される。


「女性虐待AVが、社会の中で主流になりすぎている」
これが、今回とても肯けた意見だった。この数年、AV動画を調べるためにみているのだが、特に近年、女性虐待AVの数が増えていると感じた。女性の泣き叫ぶ動画、レイプの表現もそうだが、顕著なのは睡眠薬を使う、媚薬を無理やり使い、女性が自ら求めているかのようにする。女性を固定し、なぶるようにする表現など。

とても普通の性行為ではなく、女性の人格を否定するような、人間としての尊厳を奪うような行為が特定の性癖としてではなく、通常の動画として拡散されている。人間ははじめてみた性行為の再現をしたがる、というデータもあるそうだ。
それに刺激を求めて、どんどん過激化していくものであるというのは、みなさんの実感としても知られていることだろう。

海外で、AVを購入する際に身分証明の提示を義務つけるという法律がつくられたニュースが目を引いた。やはり問題が起きている証左だ。日本でも身分証の提示を義務つける必要があると思う。

「この映像は本人と契約して作成されており、この行為をしたら犯罪として罰せられます」などの注釈がAV動画につけらているのも多く見られるが、それらを犯罪行為だが、同意の上で演技だという欺瞞にどれほどの人が騙されるのかと思ったら大量にいた。反論で「これは演技だからいいのだ」とつけてくるア○が大変多かった。
ではなぜ、男性が虐待されるAVがほとんど流れてこないのか。女性の虐待動画ばかりが流れてくるのか。この非対称性に違和感を感じないのはなぜなのか。動物の虐待動画があれば批判されるし、削除される。しかし女性虐待動画は、そのまま売買されたり閲覧され続けている。

今の社会が、女性を性の道具として販売するのを当たり前としているのが背景としてある

女性を性の道具として売ることは、風営法でいちおうの規制があるとはいえる。とはいえ、女性の性を売ることが当然とされる社会において、女性の人権は軽んじられ続けている。

 少なくとも、性風俗営業を風俗営業と同じように許可制の下においた上で、女性の人格を否定し社会道徳上有害な性的役務をさせる営業を許可しないように改めるべきである。これは、女性の人格を否 定「しない」、あるいは社会道徳上有害「でない」性風俗営業がありうる、という趣旨ではない。本来は、客の性欲を満足させるための道具として人を使用するがごとき営業行為全般を禁止すべきであり、本来的に必要な法改正は、上述した売春防止法の改正である。だが、それが実現するまでの問は、より機動的な風営法の改正で対応することも否定されないという趣旨である。
 なお、政府が性風俗営業を届出制にした趣旨は、上記の点に加え、「結局、 従来その実態を完全に把握することが困難であった〔性風俗営業〕について届 出制をとることとし、これによって、まず、その実態を公安委員会が把握した 上で、この種営業に対する適正かつ十分な規制を行うこととし」2°たとされて いる。それからすでに四半世紀が過ぎたのであるから、政府は「実態把握」から早く脱して、性風俗営業に対する「適正かつ十分な規制」に乗り出すべきで ある。  

『「性風俗営業の人権侵害性」____「性行類似行為」をさせる営業等の違法性に関する諸判決_____________』中里見博 102P

「本来は、客の性欲を満足させるための道具として人を使用するがごとき営業行為全般を禁止すべきであり、本来的に必要な法改正は、上述した売春防止法の改正である。」

ここに深く同意する。客の性欲を満足させるための道具として「人=女性」を使用するが如き営業行為全般を禁止すべきであり、法改正が必要だ、と。
女性は人間だ。なのに、道具として、性欲を満足させるため、また支配欲、加害欲、様々な欲望を満足させるために僅かな賃金で働かされる。
賃金が僅かなのがいけないのならば、賃金を高額に設定したら良いのはないかという意見もあるが、そうではない。
本来、欲望を満たすために人を道具として使ってはいけないというところに立ち返ってほしい。その上、低賃金でしか支払いがされず、そこから抜け出すことすら難しい、そこに留まらせるために低賃金でつなぎ止められるという構造的な問題がある。
まるで遊郭のシステムのようだ。遊郭では全ての人権を父親、または家長の男性から、遊郭の置屋に譲渡される。その証文の数々を「〜性差の日本史〜」の展示で見た時にはショックを受けた。こんなにも全ての人権を紙一枚であっさりと男性から男性へと売り渡されていた時代があったこと。畜生と同じだとされ食事を土間に落とされて手を使わずに食べろとか、張形で男性器にならされたりだとか、ひどい扱いだった…。日用品は全て置屋に管理され、購入する時も加算され、安い賃金が支払われるよりも日々のツケが上回り、借金の返済はほとんどできない。よって自由の身になることは余程の幸運がなければ難しかった。
今の時代とどこが違うだろう。
女性は同じ仕事をしても男性の賃金の7割しかもらえない賃金格差がある。その上、女性にとって性産業は稼げるとされ、お金を稼ぐため、または借金を返済するためにと身を売らされるが、実質の賃金はとても安い。AVに出るだけでは到底生活できず、性風俗の掛け持ちもしている場合も多いという。
実感するのはAV調査時に300円、500円の値段設定を見る時だ。これで実質女性への手取りがどのくらいであろうか。
女性たちはAVの出演だとは知らず、手のモデルだとか、簡単なアルバイト、面接だとか様々な手口で出演を誘導される。
現場に行き、これは嫌だと主張しても「AV女優を差別するのか?差別はいけないことではないか」と詰め寄られたり、山の奥の一軒家など帰れない場所に連れて行かれての撮影などもあるという。また、拒否すると「撮影キャンセル料として三千万円を支払え」といわれ、無理なので撮影に応じるというケースも。
どこが女性の自由意志だというのだろう。

裁判所は実写のポルノグラフィを公衆道徳上有害な業務と認めている

 最後に、裁判所が実写のポルノグラフィの撮影行為についても、公衆道徳上有害な業務と認めていることの重要性を指摘したい。女性が「あてがわれた男優を相手」に性交させられることだけでなく、口淫や自慰行為をさせられることまでが性道徳を著しく害すること、派遣労働者一般の福祉を害することが認められているのである。そこには、男性を「あてがって」性交をさせるのは当然のこと、性交類似行為をさせる実写ポルノの撮影行為をも規制しうる法的な可能性が示されている。 この判決の考えに基づけば、将来「性売買禁止法」あるいは「性的商業的搾取禁止法」といった法律を構想するとき、性交類似行為をさせたり、ストリップなどをさせたりする営業行為を規制できるのはいうまでもないが、それに加えて、「女性の人格を無視してこれを男性の快楽のための道具視する非人間的な」仕方で女性を性的に扱うポルノグラフィの撮影行為をも同時に規制することができるし、そうすべきだということになるであろう。

『「性風俗営業の人権侵害性」____「性行類似行為」をさせる営業等の違法性に関する諸判決_____________』中里見博 103P

性道徳を著しく害すること。女性の人格を無視してこれを男性の快楽のための道具視する非人間的な撮影行為。
規制するべきだし、そうなる可能性はある。
しかし現行のAV新法は「撮影し、販売する側を利する法になってしまっている」現状がある。女性を守るためにといいつつも、実のところは売買し、儲けを得る側のための法律になってしまっている。その結果、性犯罪的なAVが大氾濫し、女性の人権がもっとおとされることにつながってしまっている。
この次の国会で、AV新法の見直し審議が行われる予定だ。附則で2年以内の見直しがあるためである。普通は3年以内の見直しというのが多いところ、2年以内の見直しをするのはとても珍しいらしい。
この審議において、ますます販売側の利益をあげようとするのではなく、女性の立場にたって、女性の人格や人権を損なわないための法に少しでもするために、女性の意見を聞いて取り入れて頂きたい。本来は、前面禁止にすべきだが少しでも女性の尊厳が損なわれない形にすべきなのであって、女性の尊厳を毀損したままの労働形態であるのは間違っている。
せめて、「性犯罪の肯定表現」は禁止としていただきたい。人間は、みたものに影響される。法の改定を急ぎ、これ以上の被害を出さない努力が必要だ。

ついた引用リプに対しての回答

AVに影響なんてされない、という人は、真夜中に食べ物のCMをみても何も思わない人なのでしょうか。影響、受けませんかそうですか。

また、AVはフィクションだから良い、という主張もありました。フィクションではないからいけない、などと自分は主張していないので的外れな反論ですね。
フィクションだからいい、の意味が成り立っていません。
でもある意味「作り物ではないと理解しているから」こそ、フィクションだからいいんだぞ!と無理筋の擁護をしているともいえます。

同意しているからいい、というのもありました。
同意しているから何が良いのですか?
上記にあるように「性道徳を著しく害すること。女性の人格を無視してこれを男性の快楽のための道具視する非人間的な撮影行為。」であるという裁判所からの判断がでています。よって、それが同意であるかどうかは関係がないのです。
また、同意だと言われている中にも同意したかのように誘導されているケース、グルーミングをされてしまい、YESしか言えなくなってしまっているケースも報告があります。判断に脆弱性が認められる場合は取り消しができるとなりましたが、報復をおそれ申し出ができていない状態です。動画の消去についても同様です。

いじめられていても、「お前、俺と遊んでいるだけだよなあ?同意してここにいるんだろ、だから無理やりじゃないしいじめじゃないよな?」ということに対して、「うん」以外の返答をできる人がそう多くいるとは思われません。それと同じだと想像してみてはどうでしょうか。
これは同意できているから良いのだと思えますか。

現在、7,8万件の表示がされている「AVに影響されている」というツイートだが、本当に興味深い反応が起きている。何に対して感情が動いたのか、ご自分で掘り下げてみてほしい。


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