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新しい空気を吸う4月

この4月から働き始めた。
就活が上手くいかなかったので本当に3月中旬までどうなるんだろうと思っていたのだけど、何だかんだちゃんとした所にキャスト社員として入社した。

美大を出て、今はまた別の教育期間で学生や教職員の方々を支える仕事をしている。やりがいがある、とかやりたい事をやっている、という感じはまだない。
覚えることが沢山ある中で新しい環境に馴染むために上司、先輩方や同僚とコミュニケーションを取ったり、覚えたことをアウトプットしたりと忙しなくしている。

職場の人達はみな良い人だ。
懇切丁寧に仕事を教えてくれるし、分からないことは何度も説明をしてくれる。時々雑談をしたりしているとその人がどんな人なのかを少しずつ知ることができてそこが嬉しい。昨日は窓からアドバルーンが見えて、みんなして窓の外を見ていたし、今月で退職される先輩や同時期に入社した同僚を含めて数人でランチにラーメンを食べに行ったり(奢ってもらうという人生イベントも発生)した。今日は上司が休みなのと忙しくない時間だったことをいい事に、午後から出勤してきた先輩が差し入れてくれた「ちょっといいクッキー」をみんなで食べた。もちろんいつもこんなに緩い訳では無い。仕事はちゃんとしているけれども、こういうあたたかな人間味を感じるところがいいな、と思っている。
早く、と焦ってはいないけど先輩たちの足を引っ張らないようにちゃんと仕事を1人でこなせるようになりたい。

入って1ヶ月も経っていないからまだ見えていないところは沢山あると思うけれど、大学の卒業式が終わってから袴姿のまま「4月からどうしよう…」と思っていたにしては運が良かったと心底思う。


「どうですか?大分うちの雰囲気慣れました?」

仕事中、そう聞いてきたのはひとつ上の先輩だった。
職場の人達や雰囲気が良くてよかったです、と答えると笑っていた。
彼は音響関連の専門学校を出てから1年ほど仕事を転々としたあと、今の仕事に就いて3年になると言っていた。

「まあ、僕の経歴はあまり褒められたもんじゃないんですけどね。色々と仕事を転々としてたんで」

そう言っていたので、「でも働いてるだけで偉いですから」と返したら、さっきよりもよく笑っていた。

1年間職を転々としていたことに対して、「褒められたものじゃない」と話す先輩が3年今の職場に勤めているなら続けられるだけの理由がここにはあるんだろうと思う。

それは自分の生活のためかもしれないし、好きな仕事なのかもしれないし、職場の人達が好きだからなのかもしれない。そこまでは分からない。だけどそういう人が集まる場なのかもしれないと思う。


私は環境が変わることが昔から大嫌いだった。
春のクラス替え、定期的な席替えすらも嫌いで憂鬱だったくらいだ。決まって体調を崩すし、精神的な不安によってお腹の調子も最悪になることがほとんどだった。
だけど不思議なことに、今の職場に応募して面接を受け、採用が決まって出勤するその全過程において何故か「不安にならなかった」。憂鬱な気持ちにもならなかった。

いつまで今の職場にいるのかは分からない。
だけど小さな自分の直感を信じて行きたい。
働いてお金を得て生きていくという生活の営みを自分で維持していきたい。

今年は春の匂いの他に、やさしい新たな風を吸い込んでいる。


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