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猫へ

あたたかいほんわかしたぬくもり猫が
毎晩 わたしの布団の中に入ってくる。

電気を消して
部屋が暗くなって
暫くすると
布団を カリカリかいてくる。

そっと布団を開ける。
猫は 布団の中を じっと見つめる。

毎晩毎晩 何を感じているのだろう。
ときには じっと見て
入らないこともある。
何が違うんだろう。

おもしろいなぁ。

大抵は 入ってくる。

暫く 布団の中を見つめた後
ゆっくり入ってきて
数回 その場で回る。

そして
必ず わたしの腕を枕にする感じで 
寝床が整ったら 落ち着く。

あたたかい。
やさしい。
かわいい。

すんすん、と 猫の匂いを嗅ぐ。
この子は 小さい頃から
なんだか 美味しそうな焦げた匂いがする。

すんすん、
すんすん、
何度も嗅ぐ。


落ち着く。


猫は 寝付くまでに
「ふぐぐぐぅ」
「ふううううん」
と ため息まじりに
なんか ずっと喋っている。

 この子は
保護して うちに来た時から
 ひとりごとの多い猫である。

そして
ひとしきり ひとりごと言ってから
「ぺちゃぺちゃぺちゃくちゃくちゃくちゃ」
と 口を鳴らす。

わたしも 毎晩 真似をする。


真似をすると
ちょっと 気になるようで
わたしを 暫く見ている。
眠そうな顔で。

 腕に 箱座りした格好で 乗るから
猫の曲げた骨がじんわり刺さる。
軽い体重だけど
ゆっくり重たくなる。

命を感じる。

痛いなぁ、
腕つらいなぁ、
と思いながらも
愛しくてたまらなくなる。

また ぎゅっとする。

猫はもう知らん顔で寝ている。

すーすー、と可愛い寝息を立てて 
時折 夢を見て
手足をびくびくさせながら
寝言も言う。


あー、可愛い。

血が通っているって 温かい。

なんにもないところから
別々なところで生まれて
出会って
生きてきて


様々な想像を越えたタイミングで
出会う。



ちいさなちいさな命は
時間をかけて
おおきなおおきな、
かけがえのない存在になる。

確か こんなことを
子供たちの参観日に
命について 書いた文を
ラストのトリで 担任の先生に
みんなの前で読まされたな。
親に出された宿題だった。

思い出した。



温もりを感じて 命を感じる。

風邪を引いても
鼻が詰まると
風邪を引いていなかったいつもの身体が
どれほど 快適だったかを知る。



感謝する。


また 暫くすると 感謝を忘れてしまうけど。


だから 
感じたことは
その時その時
しっかりと伝えよう。
想おう。
届けられなくても祈ろう。



柔らかくて
素直で
純粋で
ひらがな的で
なんにも教えてくれていないけど
教わることの多い
そんな気取らない
言葉が好きだから

猫にも伝えたいんだけど
言葉は うまくこの子に伝わらないから
今夜もぎゅっとする。


大好きだよって ぎゅっとする。

指先に想いを込めて、
全身に想いを込めて、
ぎゅっとする。









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