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Carla Blue - Dinner Music(1976)

長らくフリージャズをやっていたカーラブレイですが本作ではなぜかスタッフのメンバーを迎えています。なぜ対極とも言えそうなスタッフを迎えたのかは謎ですがミケールズでのジャムを見るか噂を聞いて一緒にやりたいと思ったんじゃないかと予想しています。スタッフを期待すると結構これじゃない感をくらう一枚で結構聞く時の気分でこれはこれでいいって時とホーンが暗くてあんまりだなって時に別れます。(書いている時はあんまの方でした。)ちなみこの頃のスタッフは本作録音の直前にモントルーに出演しこれと同時期に1stアルバムを録音していました。

メンバー
カーラブレイ:オルガン、ピアノ(1、6)、ボーカル(4)、テナーサックス(6)
ラズウェルラッド:トロンボーン
カルロースクード:アルトサックス、テナーサックス、フルート
マイクマントラー:トランペット
ボブスチュワート:チューバ
エリックゲイル、コーネルデュプリー:ギター
リチャードティー:ピアノ、エレピ
ゴードンエドワーズ:ベース
スティーブガッド:ドラム?

ただこのクレジットには疑惑があります。それを主張しているのは日本人のドラマー村上ポンタ秀一さん。彼の自伝「自暴自伝」に書かれた内容をまとめると

  • 当時ガッドは忙しく同時に顔を出せない場所でのダブルブッキング、トリプルブッキングは当たり前

  • しかもそのストレスでクスリや酒に溺れてた

  • だから仲の良かった俺が真似することが多々あった

  • 他にもあるけどバレてない

とのことです。他にも日野皓正さんのアルバム「東風」ではマイルスデイヴィスのバンドにいたことで有名なアルフォスターの代役もやったとか。

Sing Me Softly Of The Blues
端正だけど引っかかるようなタッチのピアノソロから始まります。そしてオルガンに変わるとリズムが入って楽しい演奏になります。カーラはピアノからオルガンに変わりリチャードティーがピアノを弾いています。このくらい違いが分かるとこれ弾いてるのどっちだろうってならないのでいいです笑。遅れて入ってくるホーンセクションは少しニューオリンズっぽい雰囲気でこの後に続くエリックゲイルのギターソロも楽しいです。後半は全員でホーンメインの楽しいジャムを繰り広げていきます

Dreams So Real
ホーンと軽くディストーションをかけたギターが交代でブルージーで少しズレたアドリブを回していく一曲。ビートルズのA Day In The Lifeのオーケストラ逆再生みたいなのをオルガンでやっていてそこだけ聴いていて不安になります。この曲はスタッフ感がほとんどないです。

Ad Infinitum
オルガンのロングトーンとリチャードティーのアコピの組み合わせがソウルフルな一曲。ホーンはそこまでソウルフルではないですが互いをダメにすることなくかといって意外とマッチしていることもなく上手く共存しています。ラズウェルラッドのトロンボーンがバラエティ豊かな音で結構面白いです。

Dining Alone
ジャジーなシンガーソングライターがやりそうな気だるく悲しげなバラードですがそれ以上に聞いていて不安になる何かがあって少し怖いです。コーネルデュプリーと思われるファンキーなリズムギターだけが救いです。

Song Sung Long
スタッフらしいズッシリとした楽しいグルーヴにワウワウトランペットが被さってくる曲。他のホーンセクションはビバップっぽい感じでエリントン楽団〜ビバップ〜フュージョンを繋げたような一曲です。

Ida Lupino
クセのあるホーンが印象的なバラードナンバー。穏やかなようでクセがあるので捉えどころがない印象です。なのでエリックゲイルのいつものフレーズのソロが聴こえてくるとホッとします。

Funnybird Song
スタッフらしい楽しいグルーヴとユーモラスなフルートが楽しい曲。ここではチューバもリズム隊に加わっていてよりズッシリとしたリズムになっています。

A New Hymn
トロンボーン中心のスローナンバー。リチャードのゴスペルっぽいピアノ伴奏は聴けるけどスタッフ感はほぼないです。

最後にドラムの疑惑に関してはわからないというのが僕の結論です。ドラムとベースが小さくミックスされているのでわかりずらいですがスタッフのガッドにしては軽い気もしますがセッションミュージシャンのガッドならこのくらいで叩いてる時もあるしなんとも言えないです。それにポンタさんの本はビッグマウス発言が多いうえにドラマーは他のミュージシャンより盛りたがる人が多いような気がするので盛っている可能性もなきにしもあらず。ただどっちが叩いているにしろ2人とも上手いうえに他のミュージシャンの演奏にマッチしていることは間違いないし、ガッドのやらかしではウェザーリポートのヤング&ファインのエピソードに負けず劣らず面白い話なので別にいいかなというのが僕の結論です。

参考文献
村上ポンタ秀一「自暴自伝 ポンタの一九七二→二〇〇三」