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Weather Report - Tale Spinnin’ (1975)

 前作に引き続き世界各地のグルーヴをジャズと組み合わせたトロピカルでハッピーな一枚です。ただし曲の背景やタイトルにはニューオリンズ、中南米、アフリカ、スペイン、ポルトガルと具体性を帯びています。メンバーについて触れるとドラムのイシュマエルウィルバーンが極度のあがり症故にツアーではダメダメでスキップハッデンをサポートに入れていましたが脱退、ダリルブラウンが加入するも音が合わず脱退(なんと脱退後は脳外科医になったとか)そんなウェザーにピンチヒッターとして起用されたのが当時サンタナにいたレオン“ンドゥグ”チャンクラー(チャンスラーとも。この人は表記揺れが多いのでどう書くか悩みます)。サンタナとウェザーがたまたま同じスタジオで録音していたことからジャムに参加しウマがあったことから参加が決まり、正式メンバーとして誘われるもサンタナと契約更新したばかりだったためそれを断っています。ジャケットのメンバーは左からレオン、アルフォンソ、ジョー、アリリオ、ウェインです。

メンバー
ジョーザヴィヌル:ローズ、アコピ、メロディカ、シンセ(トント、アープ2600)、オルガン、スティールパン、ウード、トーキングドラム、シロフォン、シンバル、ボーカル
ウェインショーター:テナー、ソプラノサックス
アルフォンソジョンソン:ベース
レオン“ンドゥグ”チャンクラー:ドラム、ティンパニ、マーチングシンバル
アリリオリマ:パーカッション

Man In The Green Shirt
ジョーがヴァージン諸島のとある島で見たスティールドラムバンドの演奏に合わせて踊る緑のシャツを着た老人を見て作った曲。今までのウェザーにしてはシンプルな曲ですがチャンクラーの弾けるようなアグレッシブなドラミングによる強力なグルーヴや華やかなキーボードがとてもかっこいいです。

Lusitanos
ポルトガルにある丘の名を取った曲。穏やかなバラードでありながらもキメ細かいアレンジのベースやダーティなフリークトーン混じりのサックスが印象的です。

Between The Thighs
アグレッシブなドラミングとカラフルなキーボードとサックスが華やかでお祭り感や南国感が一番表れています。ただ後半はテンポや鮮やかさを落としてスローでじわじわとグルーヴを作っています。邦題は股間からの眺め(直訳は太ももの間)という若干変なタイトルですがこれはジョーが幼い息子を肩車しながら見たマルティグラをテーマにしているから。なんだかいつもは厳しいジョーの父親としての優しい一面を見ているようで微笑ましいタイトルです。

Badia
エチオピアにある宮殿の名前ですがアフリカというより東アジアや東南アジア特に中国っぽい雰囲気で琴のような曲や胡弓風の音が印象的です。

Freezing Fire
前作にもあったポールジャクソンやTOPのロッコのような小刻みなベースラインがベイエリア風の曲。途中のシンセソロはこの時代らしいチープな機械音ですが個人的には変に楽器として完成され誰が弾いても似たような音になるデジタルシンセよりも味があってかつ不親切さ故に工夫次第でどんな音にもなるアナログシンセの方が好きです。

Five Short Stories
初期にはよくあったノンビートのバラードナンバーですがキーボードやサックスのフレーズは初期の重厚さを減らしほぼ暮れかけた夕日を見るような明るさがあります。

コネクション:レオンチャンスラーの表記揺れ
冒頭で書いたようにとても表記揺れが多いドラマーで僕が持っているLPのライナーや本からその一部を抜粋すると

  • チャンスラー

  • チャンクラ―

  • エヌドゥグ

  • エンドゥグ

  • ウンドゥグ

等がありました。ミドルネームのようなNdugというのはハービーハンコックのセクスタントにいた時にもらった名前でスワヒリ語で兄弟や家族、同志といった意味だそうです。これなしのレオンチャンスラー(またはチャンクラー)表記よりもNdugのカタカナ表記のみの方が多いのも印象的です。ちなみに発音記号に一番近いカタカナはゥンドゥグチャンスラーです。かすかなウがンの前に入る感じですがそのままではネイティブでないと発音するのは難しそうでウンドゥグでは違うし、ゥンドゥグも読んでてゥがうるさいので読むのも書くのも素直にンドゥグで良いと思います。