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Chick Corea & Gary Burton - Crystal Silence (1973)

マイルスデイヴィスのアルバム「カインドオブブルー」のライナーでビルエヴァンスはジャズと水墨画の共通点を書いています。本作は特に水墨画的なアルバムと言える。ピアノとヴァイブというシンプルな編成ながらも名手による音の濃淡や美しくもどこか揺れるようなサウンドは水墨画の風景画の幽玄さにもと通ずるものがあります。チックコリアもゲイリーバートンも初めは不安があったようですが意気投合。これからもスタジオでもライブでも度々共演しており2人ともディオの可能性を試したくなったのかチックはハービーハンコックや上原ひろみ、ゲイリーはラルフタウナー(12弦ギタリスト)とデュオアルバムをリリースしています。ゲイリーとラルフはまだ聴いていませんがチックに関してはゲイリーが最初にして最高だと思います。
また音質に定評があるECMだけにとても音が良く安物のスピーカーでも目を閉じれば目の前で演奏しているのを聴いているようなレベルです。

Senor Mouse
スパニッシュタッチの力強いリズムがかっこいい曲。チックの低音パートはシンプルに聴こえますがとても力強くたまらなく最高です。そこからソロに入りますが動と静の対比がとても美しいです。タイトルはチックが好きなメキシコの漫画に出てくるネズミの名前らしいです。

Arise, Her Eyes
ベーシストのスティーブスワロウが作った曲でゲイリーバートンは何度もこの曲を取り上げています。ワルツのリズムを使い美しい演奏です。

I’m Your Pal
こちらもスティーブスワロウ作曲。クラシックのような美しいメロディとゴスペルタッチの低音を組み合わせた曲でECMらしいタッチの一曲です。作者スティーブスワロウは下積み時代はアートファーマーやチックも所属していた スタンゲッツのグループに所属後フリーに転向。そしてゲイリーのグループに加わった後はカーラブレイのバンドに所属した2人とは似ているようで微妙に違うスタイルのミュージシャンです。

Desert Air
コリア作。緩急や強弱の付け方、2人の掛け合いなどが何度ものリハーサルやきめ細かい打ち合わせが行われたことを感じさせます。チックもゲイリーも自分より年上のミュージシャンのサイドマンとして下積みを送りその後新主流派〜フリー〜独自性と似たような経歴を辿ってきたので考えや演奏スタイルには通じ合う部分も多かったのでしょう。

Crystal Silence
RTFの1stアルバム収録の曲でチックのソロに近いスタイルで演奏されています。RTFではエレピをここではアコピを弾いていますがこの二つの楽器の音の違いが印象です。

Falling Grace
こちらもスティーブスワロウ作曲。2人の息はピッタリでまるで腕が4本ある人物がピアノとヴァイブの両方を弾いているかのようです。この曲はバートンのお気に入りらしく自信のカルテットやステファングラッペリとの共演盤でも演奏しています。

Feeling and Things
イギリス出身のトロンボーンとキーボード奏者のマイクギブスの曲。2人の掛け合いや主役と脇役を阿吽の呼吸で入れ替わる演奏は素晴らしいと同時に技術ごり押しではなく美しさやグルーヴを忘れていないのがとても良い点です。

Children Songs
RTFの2ndアルバムより。オリジナルのメロディをヴァイブが弾きピアノはオリジナルとは違ったリズムを弾いているのが面白いです。

What Game Shall We Play?
RTFの1stより。オリジナルよりもリズミカルな演奏で打楽器のようなピアノの低音パートや力の入ったヴァイブの演奏は美しくこのアルバムのベストトラックだと思います。