黒歴史について
(悪い意味で)忘れた頃にやってくるもの。
皆さんにとってそれは何だろうか。
中学生の時友人と撮影したTiktok、小学生の頃密かに描いていた漫画。
人それぞれである。
それは、ある日突然に脳裏に蘇ってきて、我々を苦しめる。
対処の仕方は存在せず、痒いところに手が届かないように、断続的にダメージを与えてくる。
触れられたくもない恥ずかしい過去は誰にでもある。
そのような体験を、俗に「黒歴史」と呼ぶ。
電車の中や隣の席で、唐突に悶絶し始めた人間がいたならば、まさに黒歴史に襲われている最中なのである。
イタリア、コゼンツァの街中。少し奇抜なファッションをした青年が、突然あなたの目の前で頭を抱え始めた時、どんなことが彼の脳を支配しているか。
答えはこれかもしれない。
過ちを犯す人間は、何も過ちを犯そうとして行動するわけではない。
例えば善意であり、純粋な興味であり、そしてある時は単なるおふざけなのだ。
その後、その行動がどのような人々、場面、そして世界に影響を及ぼすかなど考える暇はない。あるはずがないのだ。
ただひたすらに自分の心のコンパスに従って、必死で目前の好奇心に向き合っているだけなのだ。
Mirko Antonucci。
19-20シーズン。当時AS RomaからVitória FCにレンタル移籍していた彼。対戦相手との試合での敗戦後間も無い時間に、彼は上記の動画をTiktokに投稿した。
隣に映る女性は、当時彼が付き合っていたGinevra Lambruschi。
イタリア国内では、いくらか名の通ったモデルであり、Instagramのフォロワーは54.3万人と、Antonucciの6倍である。(2024年2月3日時点)
二人の間にはSophieという子供が産まれたが、破局してしまった。
ちなみに彼が踊っている楽曲はYoung Fanaticの『Shh』。
所属チームの敗戦後にこの動画を投稿した彼は、勿論即刻レンタル打ち切りとなり、ローマの地へと帰還することになる。
この出来事で執拗に騒いだ世間に対して、「Shh..」と人差し指を口に当てる余裕はAntonucciには無かったようだ。
私は彼のこの一連の行動を、プロ意識の欠如云々と批判するつもりは毛頭ない。
逆に称賛するつもりもない。
人の人生における一場面を他人が評価することなど、傲慢極まりないことだと思っている。
冒頭で述べた黒歴史について。
記憶を黒歴史だと認定するのは、あくまでその記憶の持ち主かつ主体である人物のみであるべきだ。
つまり、Antonucciのこの一連の行動を黒歴史だと断定するような言い方をしている私は傲慢なのだ。傲慢であり、対価として自身が思う黒歴史をここで語るほどできた人間ではない。その点はAntonucciに陳謝したい。
申し訳ない。
そんなAntonucciだが、23-24シーズンよりSpeziaでプレーをしている。だが、如何せんチームの低迷と監督交代などが重なり、チームでのポジションがなくなったこの冬、同リーグのCosenzaに期限付移籍することが、2024年2月1日に発表された。
AS Romaで少年時代を過ごした彼が今どこで何をしているか。
少しでも思い出してもらえればと思い、この記事を惰性で書いた次第である。
皆さんの御心の中にMirko Antonucciがこれからも生き続けますように。
Daje Mirko.