Awwwards TOKYO Day 1 レポート
AWWWARDSカンファレンスがアジアで初開催され、会場が東京だったので一時帰国のスケジュールを合わせて参加してきました。今回初めてAWWWARDSに参加してみて感じたことや会場内の雰囲気、セッション内容についてお話したいと思います。
参加者の60%は海外の方
2日間のカンファレンスで、1日に約500人が参加し、参加者の半分以上が海外の方という印象でした。スピーカーは1日に12人で、9割が英語でのセッション。Interactioというアプリを使用して、会場内で同時通訳されたものを聞きながらセッションを楽しめたので、英語/日本語に対応した環境でした。ただ、会場内の無料Wifiは同時に複数人が接続していたため、アプリの接続も不安定で通訳が聞き取りにくかったところもあったようです。
Things were lost in translation
Min-Sang Choiさんは、Googleのシニアインタラクティブデザイナーです。Googleの日本オフィスで働いていた時のこと、また地域、文化、生活スタイルがデザインにどう影響するのかについてのセッションでした。
文化の違いから読み取れる日本と海外のデザインの違い
「日本のデザインはごちゃごちゃしてて、騒がしいイメージがある。」海外でもよく聞くことがありますが、特にそう感じるのはチラシ広告のデザインかもしれません。期間限定、セール、新商品、値下げされた価格など、目立たせるためのデザインだけれど、ごちゃごちゃして見える。では、なぜ日本のチラシ広告はそのようなデザインなのでしょうか。
東京、新宿の街並みに、同じようなところがあります。様々な店が立ち並び、競争し合う看板はまるで日本のチラシ広告に似ています。
日本のニュースアプリのデザインと海外のデザインを比べてみても、明らかな違いがあります。
日本の方が情報量が多く、騒がしいイメージがありますが、海外の方がスッキリとした印象があります。なぜ、日本のデザインはこのような印象があるのでしょうか?
それは、ユーザーに意識を置いてみると見えてきます。日本のユーザーはそのアプリをどこで使用しますか?いつ使いますか?それはどんな環境ですか?
・電車移動の多い日本人にとって、電車の中で暇を潰せる何かが必要
・片手はつり革、空いた片手で操作できるもの
こういったユーザーの背景からニュースアプリのデザインが出来上がったのではないでしょうか。日本のデザインを見慣れてしまっていた私には、こういった視点でのデザインの見方は新しい発見でした。
誰のためのデザインをしているのか
Charles Eamesの言葉に"Recognizing the need is the primary condition for the design." 、つまり「ニーズ(必要性)を認識することは、デザインの主要な条件です」とあります。
ニーズを認識することは、年齢、性別、人種、文化、地域、天候、教育を知ることに繋がります。デザインを行う上で、誰のためのデザインをしているのかを意識することが最も重要です。
私が以前、翻訳を担当した記事に同じ言葉が引用されていました。
オーディエンスにとって何が価値があるのか判断するには、彼らの悩みの種、達成、「隠された」願いを知る必要があります。次に、どう彼らの問題を解決し、目標達成に繋げ、生活をより良くするのかに重点を置く必要があります。大切なことは、どれだけ自分たちが良いかではなく、その人達の生活をより良くすることだというのを忘れないでください。
Awwwardsの公式You Tubeチャンネルでこのセッションの動画が配信されてるので、興味のある方は動画もぜひ見てください!
Goodpatch OS
Goodpatch CEO/Founderである土屋尚史さんと、Managing DirectorのBoris JitsukataさんによるGoodpatchの企業価値、文化の再構築に関するセッションです。
セッションの始めに「日本はデザインの価値が勘違いされている」というような意見があり、私もその意見に賛成する一方、なかなか海外でもデザインの価値はまだまだ理解され難いところだと感じます。
会社が60〜100人に拡大する中、新規メンバーと既存メンバーとの間で発生する不一致など、社内に良くない雰囲気が漂っている。2年近く続いているけれど、なかなか改善できない状況。しかし、ベルリンにあるGoodpatchのオフィスは日本と異なり、彼らはとても良い雰囲気で楽しそうに働いていた。明らかに日本とは違う。同じ会社なのに日本と何が違うのだろうか。
ある新人スタッフの言葉がきっかけとなる
SXSW (South by Southwest) の参加を社員に募った際、ある新人スタッフの言葉の中にこんなことが書かれていました。
「経験は少ないけど、Goodpatchのことが大好きです!この会社を世界で一番有名なデザイン会社に成長させたいです。」今、オフィスに会社のことが大好きと言える社員が何人いるのだろうか?新人スタッフの言葉にハッとしたそうです。
企業価値、文化を社員全体で考える
海外オフィス含め、会社全体で企業価値を考えるWorkshopを開催。全社員が意見を出し合いながら、自分たちが大切にしているものを言語化していき、企業価値の見直しを実施しました。
そこで生まれたGoodpatchの価値イメージをビジュアル化し、デザイナーがポスターやTシャツにデザインを行いました。
Goodpatch OS = Organizational Operating System
こうして出来上がった企業価値、文化は全社員で共有されることによって企業のOS (Organizational Operating System) になるというお話に、私はとても感動しました。今、世界中で自分の会社の企業理念や価値を聞かれたとき、答えれる人が何人いるんだろう?そう考えたときに、企業価値を考え直す取り組みに携わることができ、それを一緒に共有しながら働ける仲間がいる環境が本当に素敵だなと思いました。
魂を失わずにデザイナーを続ける方法
ShiftbrainのDesign Director & DesignerであるKeitaro Suzukiさんによるセッションでは、日本と海外のデザインに対する考え方の違いが分かりやすく紹介され、すごく良い刺激を受けました。
High-Context と Low-Context
デザイン業界だけでなくコミュニケーション文化において、日本は「Hign-Context」海外は「Low-Context」と言われています。日本では、言わなくても伝わる、空気を読む、間接的な表現が多い。一方、海外では、話し合わないと伝わらない、正確に意図を伝える必要がある、察するよりもきちんと伝える文化です。
デザイナーに注目してみると、High-Contextの日本では、1人のカリスマがデザインを作り上げる傾向があり、若手が育ちにくい環境といわれています。Low-Contextの海外では、チームでデザインを作り上げていきます。海外からDesign SystemやStyle Guideという考えが日本にやって来たのは、こういった背景からだったんだと納得しました。
この文化の違いはデザインでも現れます。日本のデザイナーはモヤっとした間接的に表現されたものを形にするのが得意で、スキャニング能力が高いと言われています。一方、海外では、高いコミュニケーション力を求められ、デザインをロジックで進める傾向があります。そのため、型にハマったデザインになりやすく、デザインが一定でつまらなくなる可能性があります。
Creativity(創造性)と Universality(普遍性)をかけ合わせる
クライアントや案件に合わせて、High-Contextの創造性 (スキャニング力、感情、1人のデザイナー)とLow-Contextの普遍性(コミュニケーション力、ロジック、チーム)のバランスを変えて提案する。
実際に海外で働いている私は、やはり普遍性をデザインに求められてるのを感じます。もしかしたら、私がソフトフェア開発企業で働いているので、デザインに対して感情よりもロジックを求められることの方が多いからかもしれません。ただ、こういった観点で今まで考えたことがなかったので、私が今、海外での働き方で直面していた悩みの原因を深く理解することができました。
また、違う図で見てみると、創造性ではDesign from future : 最終的なアウトプットを想像してからデザインをする、普遍性ではDesign from past : 過去の実績、データからデザインをすることが言えます。どっちが良いではなく、双方のバランスを取りながら制作を進める。このアプローチの方法は、これからの制作現場でさらに重視されていくだろうと思いました。
Day 1 - まとめ
英語を聞きながらメモを取るのが苦手なのもあって、Day 1のレポートは日本語セッションの紹介が多めです。他にも、クルーズツアー中に使用する連動型アプリの制作の内容(アプリが本当にカッコよかった…!)や、自転車販売促進のプロモーションの制作内容、日本で活動しているイラストレーターの方のセッションなど、各国で活躍するデザイナーの方の実績のお話が聞けて本当に充実した1日でした。
AWWWARDSのYou Tubeチャンネルで、随時セッション内容が公開される予定です。気になる方はぜひチェックしてみてください!
引き続き、Day 2のレポートをまとめたいと思います!