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『糸井版 摂州合邦辻』木ノ下歌舞伎

2023年5月29日(月)12時半開演
@神奈川芸術劇場 大スタジオ
¥5,500

よくその名は聞くけど、実は初「キノカブ」。
2020年に『三人吉三』のチケットは取ったんだけど、コロナで中止になったのよね。
今回は永島敬三くんを観ようと思い立ち、数日前にチケットを購入。前情報はほぼ仕入れずに臨んだら、衣装が洋服だったのでびっくり。ワンピースやスーツで玉手御前とか俊徳丸とか。
あ、こういう風なんだ・・・と思ったら、セリフは現代口語の部分はあるけど大筋のところは原文ママ。謎なバランス。

<あらすじ>
大名・高安家の跡取りである俊徳丸は、継母の玉手御前から恋い慕われ、家督相続を切望する異母兄の次郎丸に妬まれていた。そんな折、癩病に侵された俊徳丸は、父への不幸を詫び、許嫁の浅香姫を捨てて高安の家を出奔してしまう。
西へ西へと歩き続け、俊徳丸は大阪・四天王寺にたどり着く。両目はすでに病のため見えなくなっていたが、これまでの半生を思い、沈んでゆく夕日をひたすらに拝むと、心には美しい風景が映るのだった。
夫の行方を探していた浅香姫は、変わり果てた姿の俊徳丸と再会する。しかし、そこに現れたのは、浅香姫に横恋慕する次郎丸だった。家に連れ戻されそうになる浅香姫だったが、玉手御前の父親・合邦道心の手助けにより、俊徳丸とともに合邦夫婦の家に匿われる。
その頃、玉手も俊徳丸を追って高安の家を飛び出し、合邦夫婦が住む実家に戻ってきた。両親は俊徳丸への邪恋を思い切らせようと諌めるが、玉手はまるで聞く耳を持たない。浅香姫が俊徳丸を連れて逃げようとしたところ、玉手はどこへも行かせまいと恋敵の浅香姫に襲いかかった。とうとう堪りかねた合邦は娘を手にかけるが───。

当日パンフレットより

そもそもキノカブをミリしらで観たアタシがイカンのだろうが、何より歌うのがびっくりぽん。歌は現代語で、少年ジャンプ、チョコラBB、マクドナルドと来たもんだ。いやおもしろいなとおもったけど、歌とパフォーマンスがけっこう多くて、しかも長くて、申し訳ないんだけど途中から(飽きるなぁ)と感じたのは事実。
お芝居全体ではおもしろかったし、良い作品だったんだけど、本当にミュージカル苦手なんだなアタシ~と痛感。ミュージカルを楽しめる体質なら、もっと観劇の幅が広がるのになあ。歌ってないで話すすめてくれって思っちゃう。
そして歌のシーンでは舞台の両端にあるモニタに歌詞が映し出されるんだけど、それがちょっと無粋だった。舞台が暗いとモニタの電源が入ったのが(たとえ画面が真っ黒でも)すぐ判るし、モニタを見てると舞台上の役者さんたちから視線を外さないとだし・・・。

もともとは人形浄瑠璃の作品だけど、もっと古い『しんとく丸』や『弱法師』がベースになってるんだとか。えっ、そうなの? 『身毒丸』と『弱法師』は藤原竜也くん目あてで観た! なるほど、そうか~~(と、過去の公演の情報を掘り始めて、筆が止まるw)
思い返そうにも話の内容もあんまり覚えていない・・・もしかして当時、まるっきり理解してなかったのか? 単に忘れちゃったんだったら、記憶力やばい。まあ記憶力やばいと思い知ったから観劇メモ頑張って残すことにしたんだけど。

閑話休題。
えーっとつまり、ストーリーはツッコミどころ満載なんだけど、江戸時代の人に言ってもね~って言いたかった。
俊徳丸はフィアンセの浅香姫と継母である玉手御前にめちゃくちゃに愛されて、癩病を患って失明し顔が判らないほど爛れても、ふたりとも全く諦めずにちょうラブラブなのに、肝心の俊徳丸の良さがまったく判らない。昔話によくある「見た目も心も美しく、誰もが絶対好きになる」という設定なのよな・・・とアタシは虚無顔で観てた。癩病になるけどホニャララを飲めば目も肌も元通り!なんてある訳ないって魔法かよ。←まあつまり魔法なんだよね。当時からすれば。
御伽話に茶々入れても意味ないのに、ついココロのなかで突っ込んじゃう。いかんいかん。

色々文句は言っちゃったけど、お芝居全体では楽しめたので観てよかった。お目当ての永島くんも佳かったし、俊徳丸・次郎丸・浅香姫の幼少時代のきゃっきゃうふふも可愛らしかった。キャリアウーマン風の羽曳野もカッコよかったし、合邦夫婦の娘への愛情も切ないし、とにかく玉手の内田慈さんがとても素敵だった。
俊徳丸への邪恋と見せかけて、継子を助けるための壮大な計画だという展開がまあすごいし、父と娘の回想シーンで泣かせにかかるのはずるい。

邪恋に見せかけたって話だけど、実際のところ継子を陰謀から守るために自分の命を差し出せるものだろうかと考えてしまう・・・。「癩病にして出奔させ、高安の家は次郎丸に継がせたのち、自分の生き血で病を治す」という計画だけど、ここに玉手が俊徳丸に言い寄る必要、無くね?
古典の定番なので様々に上演されてるけど、母としての愛って美談にするのもあるけど、やっぱり恋心があったのだという作品もあるらしい。だよねえ。
恋敵の浅香姫も、姫というにはかなりたくましい描かれ方をしていて、役者さんもかなり長身だったので(俊徳丸より高かった)、パワフルで頼もしかった。次郎丸が「俺の嫁」って言うのもオタク用語ぽくて笑ったけど、こんなパワフルな嫁なら、へなちょこ次郎丸とお似合いな気がするなあ。かわいいペアと思う。

当日パンフに劇中歌の歌詞と用語解説が付いていて、物語を味わう助けになったのでありがたい。本当はアフターレクチャーのある回を観たかったのだけど売り切れてたのよね。1時間たっぷり解説してくれたらしい。後から気づいたけど当日券は出てたんで、レクチャーの日にトライすれば良かった(がっくりと膝をつく絵文字)。なんで思いつかなかったんだアタシ、莫迦なの?

概ね満足はしたものの、キノカブはもういいかな・・・とおもったところ次回の『勧進帳』にはこれまた贔屓の岡野さんご出演とな?! ううん、やはり観ずにはおれないか。しかしスウィングってのがよくわからん。その回はキャストが変わるって但し書きがあるってことは、お目当ての俳優さんが出ないかもしれんということ? 意味不明なので手を出せない! 難しいー!


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