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『スローターハウス』 serial number

2023年7月17日(月祝)
14時開演
@シアターイースト
¥6,500(一般)

serial numberの作品は問答無用で観ているけれど、今回の作品は重苦しいとわかっていたので楽しみではあったけど、足取り軽くという訳にはゆかず。最近は重かったり痛々しかったりが続くなあ。好きだから観るけど、わーっと笑顔になっちゃうエンタメぽいのが懐かしく感じるわあ。

前島亨(犯人)・・・原嘉孝
葛原佐恵子(直樹の母)・・・那須佐代子
葛原直樹(被害者)・・・新垣恒平
戸田慎一(施設職員)・・・津村知与支

この芝居は、2016年に起きた障害者施設での殺人事件をもとにして描かれている。
チラシには「障害者を殺した犯人と息子を殺された母との葛藤と憎しみ、なのに否応なく共有してしまう孤独を炙り出す対話劇」とある。
まさに90分、SEもなくほぼ動きもなく、会話をするだけの濃密なお芝居だった。

実際の事件とは違い、殺されたのはひとりのみ。犯人は元職員ではなく未成年で、服役10年後に出所したという設定。そこに被害者の母親が訪ねてくるところから話が始まる。
人を殺したことも、近親者を殺された経験もない。身近に障害者もおらず、母でもないし息子でもないので登場人物に共感するのは難しい。ただ想像するしかない。
そして最後まで答えは出なかった。そうだね、答えのあるようなものじゃないんだな。

様々なことを考えてアタマがぐるぐるする。
優生思想、オオアリクイ、佐恵子の夫の言葉、ヒトラー、ローゼンでシール買おうね、センター、同じ箱に入ってる、障害者カースト、首に巻かれたカラフルなヘビ、親の愛、頬の傷・・・
想像して考えて、でもやはりアタシにはわからなかった。抱きしめたいなんて絶対に思えないだろう、と思った。
佐恵子が冷静であろうとしていたところまではいいけれど、その後はあまり咀嚼できなくて。気になってパンフレットを買って読んだけれど、やはり納得できるようなことは書いてなかった。
答えはないんだからいいや、と思っておく。

四人の役者さんはみな素晴らしかった。
那須佐代子さんは『おやすみ、お母さん』と『エンジェルス・イン・アメリカ』と今回で今年だけで三作拝見したけどどれも素晴らしい。
原くんは『hedge 1-2-3』ぶりに拝見。なんだかあの時とまったく役柄が違うからか、こういう顔のヒトだったっけ?とか思ってしまった。いやー良い役者さんだねえ。
津村さんは東京ハートブレイカーズ以来? とおもって調べたらその2ヶ月後の『ウラノス』も観てたわ。どっちにしろ2008年だったんで15年ぶり・・・。拝見したいと思ってたのにご無沙汰しすぎだろう。
新垣さんのみまったくの初見だけど、彼もとてもよかった。

チラシには「絶望と希望に関しての対話劇」とあったが、希望はあったんだろうか。わたしには見つけられなかったけど。
そのまままるっと飲み込めはしなかったけど、良い作品だったと思う。たぶん。観てよかった。

ちょいと気になったこと。
劇場の外に掲示してあるポスターは撮影禁止になっていたのは何でかな? 今まで他の演目ではそんなことなかったのに。人だかりになって邪魔だから? ロビー内のポスターは撮影OKだったんだけど、順番待ちの長い列ができてたからな~。
あと、客席が落ち着かない空気になった瞬間が何度かあったのが気になる。スマートフォンの電源を切らずにバッグにしまう人を四、五人見た。(鳴らなくて本当によかった)上演中に飴の包みを開けるらしき音がチリチリチリチリチリチリチリチリ・・・。長っ! 上演中に席を立ったのか(もしくは遅れて入ってきたのか)、足音や扉の音も。
ものすごく静かな芝居だからめちゃくちゃ気になってしまった。お腹のなる音もしたけど、それはまあ仕方ない。
でもスマホは電源切って! 飴食べるならそーっと開けようとせず普通にピリッと破って! 上演中にやむを得ず出入りする場合は足音は忍ばせて! よろしく頼みます。

そしてやっぱり考えてしまう。
これは田島くんでやるはずだったんじゃないのかな。彼は舞台から完全に抜けたんだろうか。
公式サイトには未だメンバーとして載っているし、そもそも彼のために立ち上げたユニットだったはず。何のアナウンスもないのがまた気になる。
彼の出演、楽しみにしてたのになあ。

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