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『燕のいる駅 -ツバメノイルエキ-』 ニッポン放送

2023年9月27日(水)18:30開演
@紀伊國屋ホール
¥9000(定価)

小沢のみっちーが出演するということで興味はあったけど、チケットの値段に出した財布を引っ込めた非正規雇用者のアタシ。開幕近くなって、リーズナブルなお値段で販売されていたのを見つけ、アフタートークの日を選んで購入。やっぱ平日のソワレは入りが厳しいんだろな~

<あらすじ>
のどかな春の日の午後、燕が巣を作る季節。
埋立地に位置する、テーマパークの最寄り駅「日本村四番」でのこと。
駅員と売店の女、その友達、電車に乗り遅れた会社員らが集っていた。
彼らのたわいもないやりとりは、ごく日常の一コマのようで
おだやかな時間が流れている。
ただ、いつもと違うのは電車が一向に来ないこと。
他に人の気配がないこと。
そして空には奇妙な現象がおきていた……。

公式サイトより

メインビジュアルのノスタルジックな雰囲気どおりのセット。
しっとりエモい系のお話かな~という予想とはかなり違って、世界の終わりの話だった。へえ~。・・・って、観終わってからサイト見たら、あらすじに書いてあるじゃん。しかもこの駅が「埋立地」にあるとか「テーマパークの最寄り駅」だとか、舞台観ただけだとまったくわからなかった情報もあった。何なら戸村が駅売店の女ってのもわからなかった・・・。
観る前にそれらを知っていたら、感じ方も変わったかも。あーあ、やはり事前に公式サイトくらいちゃんと見ておくべきだった。(ってコレ書くの何回目? 学習しろ自分~~!)

駅舎の隅に燕が巣をかけ、その世話をしている高島。彼は呑気なのか変わり者なのか、人の気持ちを察することが不得手らしい。売店の戸村は、高島の好物のカレーパンを差し入れしたりと好意があるのはモロバレなのに、当の本人は全く意に介さず。同僚で幼馴染のローレンコのことは「三郎兄ちゃん」と呼んで懐いている様子。
この三人の駅職員に加えて登場するのは、弟を待つ戸村の友人、前日の電車に乗り遅れた会社員ふたり、予知能力があるといって詐欺で捕まったことのある佐々木。しりとりをしたり、コーヒーを飲んだり、会社員の営業トークを聞いたりとほのぼのしたりクスッとしたりで話は進むけど・・・。

のどかな雰囲気と見せかけて、世界の終末に差別をちりばめた不穏な話。
駅に電車が来なくなり、どこにも連絡が取れない。町は無人。空には謎の大きな雲が段々と拡がっているらしい。そして耳が遠くなり、眠くなる。寝てしまえばそのまま・・・
なぜ世界が終わるのか、そもそも日本村とは、どんなテーマパークなのか。国は日本ぽいけど、架空の国なのか、時代はいつなのか。何もかもわからないまま。
日本人ではない人間に対する差別があることも、会話の中から少しずつ明らかになる。ローレンコ三郎の着けているバッジは被差別対象者のしるしで、色によって等級が表されている。ナチスの収容所の様に。明らかな差別の描写はないけれど、いやでも想像させられる。
こんなにのどかなのにゾッとする描写が所々にあり、不穏さがじわじわと滲みてくるのは、何もかもわからない世界観のせいかもしれない。

のどかなのは高橋の性格からくるのかもしれないが、それが一番怖いとも言える。
戸村の好意にも気づいていない(気づいていないと思い込んでいる)ことや、この町で起きていることにも我関せずという感じ。大好きな三郎兄ちゃんが差別されているという事実もわかっておらず、バッジがカッコよくて羨ましかったと言う。おそろしい。
ローレンコが心情を吐露するシーンは切なかった。

最初から最後まで感じたのは高島に対する違和感と気持ち悪さ。これは土田さんの過去のインタビューを読んでも、そう感じるのでOKみたい。
戸村は彼のどこを好きになったんだろうなあ。まあ戸村に対しても違和感しかなかったので、いい組み合わせなのかも。役者さんがお若いからかバツイチっぽくなかったけどね。戸村は高島をくん付けで呼ぶのに、高島は「戸村」と呼び捨てにするから実際に若い設定? すごく年下って訳じゃない同僚を呼び捨てにするのがすでに違和感だった。

アフタートークもあったが、演者さんの中ではしりとりのシーンが人気だった・・・くらいしか覚えてないw あと、下河辺役の高槻さんが、ゲネでセットを壊したとか。
作品の内容について突っ込んだ話はなかったのが残念。

この演目は1997年が初演で、MONO以外でもいろんなカンパニーが上演しているそう。アタシは今回が初見。というかMONO自体も観たことなかったわ。調べたら、土田脚本は『きゅうりの花』をハイリンドで、『橋を渡ったら泣け』を大内厚雄くんの企画で観ていた。ふんわりとした記憶しかないけど、面白くもありちょっと考えさせるとこともあったかな。
今回の観劇後に感想を探したら、ほとんどが過去公演のものばかり。今はSNSは短文投稿が主流で、ブログやnoteみたいにまとまった文字数のものはあまりないんだな~。時代かあ。

時代といえば。初演の時よりも世の中がヤバくなっていて、より物語の世界観にリアルさが感じられるって劇評があった。そうだなあと思っていたけど、2012年の再演時の記事を読んでも「震災が起こって、よりリアルになった」という記述があって、どの時代にもリアルなのかと思ったり、いや10年以上経った今の方がコロナとかもあるし、より危険な状態になってるよね、と思ったり。特に経済とか政治的にさ・・・。


キャスト
和田雅成:高島啓治 役
高月彩良:下河辺友紀 役
小沢道成:ローレンコ三郎 役
奥村佳恵:戸村優香 役
佐藤永典:荒井湊 役
尾方宣久(MONO):本多大和 役
久保田磨希:佐々木芳美 役

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