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『勧進帳』 木ノ下歌舞伎

2023年9月7日(木)19時開演
@芸術劇場シアターイースト
¥5,500

3ヶ月ちょい前に『摂州合邦辻』で初キノカブを体験したばかりなのに、すでに次の演目ですよすごいな! 前回は永島くん目当て、今回は岡野さん目当てで拝見。ミーハーで申し訳ない。
『勧進帳』は歌舞伎の中でもちょう有名な演目。とはいえ恥ずかしながら歌舞伎は全く見たことないんだけど。そしていつもの如く何の予習もせずに飛び込む。

あらすじ

鎌倉幕府将軍である兄・源頼朝に謀反の疑いをかけられた義経たちは、追われる身となり奥州へ向かっていた。道中の加賀国(※1)・安宅で、義経一行は自らを捕らえるための関所に行く手を阻まれる。義経は強力(※2)の姿、家来たちは山伏の姿に化けて関所を通ろうとするが、関守の富樫左衛門には山伏姿の義経たちを捕らえるよう命令が下されていた。そこで武蔵坊弁慶は機転を利かせて、焼失した東大寺を再建するため勧進(※3)を行っているのだと話す。すると富樫は、弁慶に勧進帳(※4)を読むよう命じるのだった。もちろん勧進帳など持っていない弁慶は、別の巻物を開くと、それを本物と見せかけて勧進帳の文言を暗唱してみせた。その後も一行は山伏を演じきり、関所を通る許しを得る。しかし、ふとしたことから強力が義経ではないかと疑われてしまった。緊迫した状況のなか、弁慶は義経をどこまでも強力として扱い、杖で打ち据える。それを見た富樫は、頼朝の命を破り、一行を通してやるのだった――。
(※1)現在の石川県小松市
(※2)山伏に伴って荷物を運ぶ従者
(※3)寺院の建立・修繕などのため、信者や有志者に説いてその費用を奉納させること
(※4)勧進の目的について記された巻物形式の趣意書

公式サイトより

いやーー、面白かった・・・
富樫さいこうだった。観てよかった。全方位に感謝だよありがとう!
語彙消失してるので散漫な文章だけど、忘れないうちにメモ。

全席自由。舞台は細長い一本の道、舞台を挟んで両側に客席。
衣装は全員黒一色、小道具も白か黒、モノクロームな世界。カッコイイ。
義経一行 VS 関守という構図だけど、4人の部下たちは両者を兼任しているというところが妙味。シーンごとに従者になったり番卒になったり。

まずは関守たち。椅子の背に座ってタバコをふかす富樫左衛門。おかっぱにロングコートが印象的。番卒オカノがレッドブルを皆に買ってくるが一つ足りず、自分の分を諦め富樫に渡す。(最初にクスッと笑う部分。岡野さんのキュートさ満開)礼も言わず不遜な態度で受け取るが、いらないと投げ出してしまう。

そこへやってくる義経一行。番卒達がさっと反対側へ駆けて行き、弁慶の後ろにつくと従者四人になるのだ。衣装もなにも変わっていないんだけど。見立てって面白いな。

歌舞伎を知らないのでよくは判らないアタシにも、単に現代風アレンジしてあるんじゃなくて、きちんと原作(?)をベースにしてあるのが感じられた。稽古ではまず歌舞伎の完コピをしたらしい。すり足とか単純に体きつそう。すごいな。

義経役の方、女性とおもってたら男性なのね。・・・とおもってたんだけど、トランスジェンダーの女性だったらしい。そして弁慶は巨漢のアメリカ人というのも謎に面白い。富樫との丁々発止のやり取りも迫力だし、義経打擲からの這いつくばり謝罪するシーンには胸打たれたよ。

威張った上司な雰囲気の富樫が憎らしく、義経一行が無事に関を通れるようにと応援する様な気持ちで見ていたのだけど。そして何とか関を越えた一行のもとに、富樫が現れた時にはヒヤリとしたんだけど。
ポテチやレジャーシートでパンパンに膨らんだレジ袋を両手に提げた富樫の、照れ臭そうな笑顔を見ていたら、何だかおかしいやら哀しいやらかわいらしいやらでグッときてしまった。

解釈はひとそれぞれみたいだけど、富樫は義経だと判ってて通したんじゃないかな。と、アタシは思っている。だからこそ切ない。
自分の職場の上下関係、人間関係と、義経・弁慶の関係との差を感じてしまったのだと。彼らを通したら自分のゆく先はもうないと判っていたのに。
ラスト、ひとりラジオのニュースを聞いている富樫の気持ちは・・・。

監修・補綴:木ノ下裕一
演出・美術:杉原邦生[KUNIO]
出演:リー5世 坂口涼太郎 高山のえみ
岡野康弘 亀島一徳 重岡漠 大柿友哉
スウィング:佐藤俊彦 大知

初見の坂口涼太郎さんに持っていかれた・・・。
今までお名前しか知らなかったのだけど、めっちゃよかった。要注目ですな。

木ノ下さんおすすめの原作台本。解説付きだそう↓


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