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旅に出よう。旅の目的はやがてわかる。『絵描き』いせひでこ著

今日は絵本のお話を。

子どもの頃はほとんど本を読まなかった。家には本がほとんどなかった。今になって絵本の優しさがじんわり心に響いてくる。

今の私に響いてくるものだけを手にとっている。まず絵と私の相性。次にストーリー。文章のない絵本も何冊か手元にある。少しずつ増えてきて、本棚の小さな絵本コーナーに優しいオーラが広がりつつあるのが嬉しい。

今日は、伊勢英子さんの『絵描き』。

この本との出逢いは偶然だった。地元のショッピングビルに出店していた古本屋さんで見つけた。それまでこの本も伊勢英子さんのことも知らなかった。

ラックに立てかけてあった表紙の絵に目が止まった。水彩画の透明感のある優しい絵だ。絵を描く少年が旅に出て、自然や街や景色を描く。描くことを通して、ものごとの本質や、時の流れや移り変わりを全身に刻み込んでいく。

表紙裏のゴッホのメッセージが印象的だ。

『絵描き』表紙裏

主人公は絵を描く少年。自分が見ているものを描く。刻々と変化していく風の匂い、空の光、花の色、感じるままに。

自分が描いてきたたくさんの絵は、自分の記憶。あまりにたくさん絵を描いてきたので、わからなくなることがある。でも記憶は空でつながっている。

なんて優しいストーリーなんだろう。

『絵描き』より

やがて、夕焼けが さっきの 行列を 全く 別のものにした。
遮光のなかで 太陽の花が、まるで 昼の 満点の星だ。
時と ひかりが 風景の表情を こんなにもかえるんだ。
描きたい、と思った。

『絵描き』キャプションより
『絵描き』より

この本を手に取るのは、私のように子どもの頃の自分に出逢いたいと思う大人が多いんじゃないかと思う。主人公の少年と同じ世代の子どもたちが、この本を読んだら、どんな感想を持つのだろう。。。

ここで、伊勢英子さんの経歴をチェック。

伊勢 英子(いせ ひでこ、1949年5月13日[1] - )は、日本の絵本作家。夫はノンフィクション作家柳田邦男。しばしば「いせひでこ」名義でも活躍している。

1949年北海道札幌市[2]生まれ。実父は日展画家。中学卒業後上京し、佐藤良雄からチェロの指導を受ける。

1972年東京芸術大学美術学部デザイン科卒業。フランスにて1年間イラストレーションの手法を学ぶ。38歳のとき眼疾患で右目の視力を失う。

https://ja.wikipedia.org/wiki/伊勢英子

柳田邦男さんとの共著も出されているが、ご夫婦だった。ご自身の世界観が凝縮されている短い文章に、優しさと深い含蓄が感じられるが、そういう時の過ごし方をされてきた方なんだろうと思う。

また、この『絵描き』の旅の背景も日本ではないことがわかるが、フランスに1年滞在されていたということだから、イメージはフランスの郊外または田舎といったところだろう。

https://ja.wikipedia.org/wiki/伊勢英子

旅に出たいという想いが思い切り刺激された。もともと私は、行きたい場所をきっちりと調べ、綿密にスケジュールを立てるタイプではない。現地で荷物を持ってウロウロしたくないので、宿だけは出発前に押さえておくが、詳細は「未定」の状態で出発し、現地で、肌で感じる空気感で動くことが多い。どんなに有名で評判の街だって、自分の感覚とマッチするとは限らない。違うと思えば、超大雑把な計画を変更し、宿泊先を変えることもある。全ては、現地で自分が何を感じるか。

そんな旅に出たい。最近、何気なく「これいいな〜」と思うとフランスに関連のあるものごとが多い。個人的な諸般の事情から、しばらくは長旅には出られないが、今がその時!と思えば、突撃しちゃうかもしれない。

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