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実家改造 Part2

自分の居場所はどこ?

高齢の母に日常のサポートが必要になって、母を実家から呼び寄せて一緒に生活するようになったのが2020年1月。2021年の3月、突然の「家に帰りたい」という言葉に、『帰る』ことを決めて1ヶ月後に実家へ。特に母に急かされた訳でも、私の背中を押す何かが起こった訳でもなく、それが以前から決められていたことのようで、何の迷いもなかった。

それ自体はそれでいい。ただ、実家が私を迎えるた態勢になっていなかった。その昔は両親、祖母、妹と私の5人が暮らしていた。祖母が他界、私が独立、妹が結婚、そして父が6年前に他界。必要に応じた小さなメンテナンスのみで、直近6年はお手入れ皆無。押入れは満員御礼。わかってはいたのだが、どうにでもなるとタカを括っていた。しかし、現実はそんなに甘いものではなかった。

通常の引越しなら行き先は「空家」だから、段ボールも「とりあえず」の仮置きする場所がある。ところが、それがない。押入れは既に満杯だから、閉じた押入れの前に段ボール箱を積み上げるしかなく、段ボール箱を開いたところで、それを納める場所がなかった。途方に暮れた。「これは間違いだった?」と自分を呪ってもみた。

とはいえ、日常の時間の流れは止まらない。私には仕事もある。まだ立派な会社員なのだ。在宅勤務を認めてもらったので、家の中に仕事場を作らなければならない。いったいどこでパソコンが開けるというのだ・・・段ボール箱に埋もれ、「あの段ボールを開けたい!」と思っても、そこに手が届かない。手が届いても、その上に別の箱が乗っていて動かせない。2階の自分の部屋は照明を変えるつもりで元の器具を外しておいたのだが、しばらくシーリングライトを取り付けられず、夜はしばらく暗いままで何もできなかった。

さらに、環境は容赦なかった。断熱という発想のない時代の建売住宅なので、外気温の影響をまともに受ける。夏は壁が熱を帯びてエアコンが効かず、冬の底冷えは悲しくなるほど厳しかった。

日常を回していくための必死で片付け(それが改造 Part 1)をしていた。自治体発行のゴミ出しルールブックと首っぴきで、持ち主を失ったモノや、どう考えても今もしくはこの先使う見込みのないモノたちの処分に明け暮れた。箱は超スローペースながら減っていった。箱の存在感はそのまま私のストレスだったから、これでずいぶんと楽になった・・・はずだった。が、そんなにカンタンではなかった。

たしかに段ボール箱は全部解体できた。しかし、母は自分で食事の支度ができないので、デイサービスのない日は朝昼晩3食の準備が必要で、全く自由な外出ができなくなった。高齢のため筋力も認知能力も衰えが目立つようになり、サポートに時間を奪われ、苛立ちが募っていった。夜中に起こされることもしばしば。こうなると、日常の小さなことにも気が立ってしまう。この生活、いったいいつまで続くんだろう。

引越し当初から、私の中にひとつのキーワードがあった。それは『仮住まい』。母のサポートが終わるまで。その後は自分の好きなように生きる。だから、自由になれる時が来るまでの我慢だ、と。必死の片付けも、私好みに極端に変えると、母が「これは自分の家じゃない」というかもしれないという遠慮もあった。更に、この家にいつまでいるかわからないからテキトーでいいという思いもあった。だって『仮住まい』なんだもん。。。『仮住まい』が収束する気配もなく、我慢は限界を迎えていた。

『仮住まい』との訣別


ささくれ立った心に、ある思いが浮かんだ。もう『仮住まい』はやめよう。いつまでここにいることになるかはわからないけれど、今はここにいる。今が大切にできない人が、どうしてその先の自分を大切にできるのだろう。ここに自分の居場所を作ろう。『仮』じゃなくて、しっかりと自分事として考えよう。

それまで2階の、昔私が使っていた部屋を仕事部屋にしていたが、夏暑すぎるのと、母のヘルプ要請を見逃さないために、1階にワークスペースを作る。その場所を確保するために、既存の家具を処分し、家の中のモノも、今の生活で使用していないモノは私の判断で処分する。とにかく、自分の居場所を作るのだ。

こんな感じで実家改造第2弾が始まった。6月になっていた。

やったことリスト

改造のスタートは、ダイニング・キッチンにワークスペースを作ること。大きな食器棚とサイドボートには5人家族だった時代の食器が詰まっていた。それでも引っ越し前にかなり処分したのだが、明らかに今の生活には出番がないモノたちが大半のようだった。食器の処分から始め、とっておきたいモノを移動させて食器棚とサイドボードを処分。省エネも見据えて冷蔵庫を買い替え、無印良品のステンレススチールシェルフにパーツを加えて必要なものを納め、ワークスペースを作ることに決めた。

改造とは言えないかもしれないことも含め、6月以降にやったことをリストアップしてみた。

  • 食器棚廃棄

  • サイドボード廃棄

  • 食器の処分

  • キッチン以外の場所に待避していた、私が好きな食器たちを全てキッチンに集めて収納

  • 母が観なくなってしまったTV処分

  • 自分がダイニングで観るためのTV購入

  • 家中のあちこちにある非常食・飲料水の入れ替え

  • 省エネ・省スペースのため、冷蔵庫買い替え

  • キッチンのシンク下を刷新。鍋類や調理小物を処分

  • ダイニングにBoseのスピーカーを接続。

  • ダイニングのステレオをBluetooth化(それまではスマホとはケーブル接続)

  • 洗面所のシンク下整理

  • 衣類の断捨離

  • レースカーテンを全とっかえ。いくつかはカーテンレールも交換

  • 北側以外の窓に簾もしくは断熱ブラインド取り付け

  • ダイニングの南側窓にサンシェード取り付け

  • 車のバッテリーとタイヤを交換

  • 初めてのお掃除ロボット購入

  • 購入して5年になる自転車(クロスバイク)、パンク修理からの初メンテ

  • スマホの機種変更

  • WIFIを光に変更

  • ダイニングとキッチンに敷きっぱなしだったホットカーペットを撤去。クリアマットに変更

  • 介護保険から住宅改修(手すり)設置

  • 本の断捨離

  • 小物断捨離で『床にモノを置かない』を徹底

  • 2Fの窓にペチュニアのプランター設置

  • クレジットカードの整理(サブスク用のカード作成)

  • 物置の整理(本格的なDIY道具(大きなノコギリやスコップ、植木鋏等)私には使えないものを処分)

  • 使い古しのタオルや雑巾の処分

  • 衣類の処分

こうして見てみると、大したことのないアイテムもあるが、この2ヶ月半は必死だった。特にキッチンの食器類の処分の後の、手元に残したいものの収納はずいぶんとアタマも使ったし、体力も使った。最初は、これ全部収納し切れる?と自分でも半信半疑だったが、何とか納めた。キッチンの動線が少し長くなった気もするが、スペースの使い方という観点からは絶対に改善されたと思っている。

その後は、掃除の頻度が飛躍的に上がった。これまでほとんど無メンテナンスだった車や自転車に手を入れた。この車と自転車が私好みであることを再発見して、ちょっと嬉しくなった。こうなると相手も愛情を返してくれるから不思議だ。車にはより断熱効果の高いサンシェードも購入。水道と電源がなくても洗車できる高圧洗浄機まで買ってしまった。何という変わりようだろうか。

新しい環境

キッチンに立つ時のラジオやVoicy、Audible、お仕事中のFOCUS音楽に、Boseのスピーカーの底力はとてもうれしい。メルカリで購入した中古品だが、私のメルカリ史上、最高のお買い物だっかかも。

床に置くモノが最小限になって、お掃除ロボットの活躍頻度が飛躍的に向上した。思い通りに動いてくれないところはご愛嬌^^ 早く慣れないと!

大改造開始前のTo Do Listにあって未達なのが、ダイニングに小さめのお寛ぎチェアを置くこと。コーヒー片手に本や雑誌を開くスペースが欲しい。目星をつけたモノはあるのだが、果たして小さなダイニングの空間で全体と調和するバランスが取れるか、まだちょっと自信がない。もうしばらく現存の家具や小物たちの声を聞いてみようと思う。

愛犬Cutieには、買ったまま放置していた人工芝で、陽射しが防げる場所を整えてあげた。暑すぎてなかなか家から出られないが、ワイルドなワンコで、お外が大好き。この子にも快適な時間を過ごして欲しい。

こうして見てみると、モノゴトとの関わり方がずいぶん変わったなと思った。ずっと変わらずバタバタしているのに、モノや環境にメンテナンスを入れて、より快適な時間を持とうとしているし、それによって愛着が増している。そして相手が愛着を返してくれているようだ。

母との関わり方で今、考えているのは、「ヘルプしてあげる」というスタンスだと、思い通りに行かない時に「なんでこんな事しなきゃいけないのよー!」となる。イライラの原因だ。そうではなく、自分のためにやる。自分の思いでやる。相手があることだから自分の思い通りにならないことの方が多い。受け身になったり、「やってあげる」という上から目線は、いい関係やいい結果を生まない。それは望むことではない。そんなスタンスをキープするためにも、自分の居場所をいつも整え、自分自身をメンテナンスしていくことが大切なんだと思う。これで完璧にうまくいくなんてことはないだろうし、「やらかす」ことがなくなるわけではないと思うが、ありたい自分に近づけるはず。文章として読むと、「なに当たり前なこと言ってんの?」と感じそうだが、改造 Part 2 が一段落ついた後に受け取ったメッセージ、だ。




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