夜流し

 通信販売サイトを開いて、買い物かごに気に入った下着を片っ端から入れるくらいの体たらくな欲で、誰かと分かり合えるはずもなかった。ただ好きなだけででいいと彼女は言っていたけど、彼にはその思いは結局分かり得なかったらしい。それと同じように、私のこの怠惰な色欲とやらは、いつの日も成就などしてやらない。それなのに嬉しいのは、片思いの辛さを知っているからだ。枕に偉人の名前を付けて喋るとあたかもそれらしく聞こえてしまう。それくらいの適当さで、誰かと触れ合えたなら私は私ではなくなれたのか。気付くのは今で、今は気付けばもう過去だ。

 伝わらなくても伝え合おう。そう思ったのは、あの日に色々なことを諦めてしまえたからだ。きっとまた希望を抱いた頃には、分かり合えないならもういいわと泣いてしまう。生産性のないことが一番好きだって、そんなこと誰にも言えなかった。辛いね。

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