くま

 私はくまと闘っている。目の前のくまはとても優しいくまだ。できることなら闘いたくなんてない。それなのに私はくまと闘っている。悲しい顔をして、だがしかしそれを悟られないように。どうしてこんなことになったのだろう。もう負けてしまってもいい。そう思って目を瞑る。私は土俵の外に投げ飛ばされた。と、そこで目が覚めた。

 思えば、くまと相撲をとるなんておかしな話だ。昔話じゃああるまいし。夢ノートを開く。

くまと相撲をとった。負けた。

夢ノートを閉じる。

夢ノートを開く。昨日のページを捲る。

くまと相撲をとった。勝った。

一昨日のページは見ずに、ノートを閉じる。

ああ、昨日もくまと闘っていたのか。昨日はくまに勝ったのか。

夢ノートのさっき書いたページをまた開く。

負けた。を消して、勝った。に書き換える。

「これでよし。」

手元にあった木の実を食べる。そしてまた目を閉じる。

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