気休め

 脱いだら凄いかもしれないのに脱がせようとすらして来ない男共に私の日常なんて一切見知られたくはない。自衛を重ねて大人になった私の隣に誰も居てくれなくても、私が私の理解者である限りは生きていたいと思う。

 男の考えていることよりも女の体のことのほうがよくわからない。毎月血が出て腹が痛んで産みたいとばかりに熱が灯る。そんな体を持て余して悲しくなって遠くの他人の愛を毟った。遠くの他人はいつだって私の思い通りになる。私自身よりもずっと私の思い通りになる。だから都合よく呼び出しては追い返す。自分に向けての優しさを人は言い訳と呼ぶらしいから私は誰にもこれを教えない。言わなければ言い訳にはならないから。そんな言葉の罠で私は私を許し続ける。

 生きていることは苦しいことだ。だから楽しくても悲しくても笑う。死は私達の必然だ。生という前提がここにある限り。

 昨日あれほど煩わしかった欲求に今日会えないことが寂しい。穏やかな休日に自分の欲さえも奪われて空っぽになってしまった。苦しくないことが苦しくて悲しい。不満足。いつだって少し不機嫌な自分という愚かな生物が選挙権を行使して投票する。人権を訴えながら労働する。欲求と向き合いながら血を流す。痛みを悼む。

 ただ部屋に引き篭っている今日も、ちゃんと生きてはいたんですよ。君がそれを知らないのは少し悔しいから、だからわざわざ教えてあげているのです。ねぇ君も生きているんだね。

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