介護職に未来はあるのか

 2025年には高齢化率が約30%になると言われているこの国では、もう何年も前から介護現場の人手不足が問題視されている。現在介護ヘルパーとして現場で働いている私が、今後介護の仕事を続けていけるのか、どういう働き方の選択が考えられるのか等の話をしていこうと思う。

 月並みな表現で言うと、確かに介護の仕事にはやりがいがある。だが、体力的にも精神的にもキツイ仕事であるというのも事実である。介護現場で何年か働いていると、介護福祉士の受験を検討する人も多い。介護福祉士は名称独占の国家資格である。そして、業務独占の資格ではない。つまり、介護福祉士でないと携われない仕事というものは今の時点ではない。

介護は専門性の求められる仕事である。そのなかで、介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)や、介護福祉士実務者研修(旧ヘルパー1級)、介護支援専門員(ケアマネジャー)など、様々な資格が存在する。実務経験が大切な仕事でもあるため、高学歴ではなくても、スキルアップが目指せる仕事なのである。

介護の仕事に未来はあるのか。最近よく考えている。未来に、介護の仕事はある。これは確実な事実である。だが、仮に現場がこのままの状況なら、介護の仕事は破綻してしまうのではないだろうか。処遇改善を求める頻繁な署名活動、定期的な研修や事例検討、ICT化(業務の機械化)等、少しずつ介護の現場も変わりつつある。2000年に介護保険制度が施工されてから、少しずつ、介護の現場は変化していっている。だが、本当に少しずつである。現場の意見とお役所の意見が行ったり来たりしている間に、日本の高齢化は急激に進んでいる。現実に、大切な人の長生きを喜べない社会がもう来てしまったことを、未来を生きる私たちは、どう解釈すればいいのだろう。

 介護の現場で働いていると、色々な人が悩んでいることがわかる。悩みのない人なんてきっといないのだろうけれど、優しい笑顔の誰かがこれほどまでに悩み苦しんでいることは、知らない人も多くいるし、知ろうとしない人も多くいる。知るのが怖くて目をそらす人や、悲しい現実を受けいれられない人、考えようともしない人や、自分のことで精いっぱいの人など、この社会には実に多種で多様な人が混在している。

現場で働く介護職の悩み、上に立つ責任者の悩み。介護保険制度を利用している利用者の悩み、その家族の悩み。それぞれに、それぞれの不安や葛藤がある。誰かが誰かの感情に過度に接する介護という場面で、関わる人はそれぞれの苦しみを抱える。避けられない老いや死があり、なくすことのできない人とのかかわりもある。受けいれ難い現実の先には未来があるけれど、その前提には大切な価値観や生活歴や過去がある。
そういう誰かの苦しみを軽減する役割を担うのは、いったい誰なのだろう。利用者の苦痛を傾聴する現場の介護職、その介護職の悩みを聞く現場責任者。それだけで本当に、介護という仕事は今後も成立していけるのだろうか。給料と休日数、労働時間とその他条件を天秤にかけて、満足に休息できない私(たち)の生活は、果たして保障されているのだろうか。

 私は、介護にかかわるすべての人の相談役という仕事が必要なのではないかと思う。生活相談員という仕事もあるが、カバーできる範囲は限られている。現場のことを知りながら、日々の業務に過度に追われることなく、メンタルケアのスペシャリストとして働く人が、介護業界には必要なのではないだろうか。それが実現可能なのか、公認心理士等の心理系の専門家の仕事なのか、それとももうそういう仕事が存在しているのか(個人的な感覚としては、多くの人は今この瞬間も悩んでいる)、正直それはわからない。私は後何十日か働けば(実務経験3年)、介護福祉士の受験資格を得られるのだが、国家資格を持った介護の専門家は、果たして誰のために働くことができるのだろうか。

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