水くさいよな、生きるのも

 なんだか今日はやけに目が乾いているように感じる。だから、泣いてみようと思った。目を瞑ってそれっぽい声を出す。泣けない。天を仰いでそれっぽい表情を作る。泣けない。どうやら私は、泣き方を忘れてしまったようだ。人は泣きながらにして産まれてくると聞く。私は何なのだろうか。私は人なのだろうか。確かに泣いていたはずだ。昔はそうしていたはずだ。できていたことができなくなるということは、なんとも、むずがゆいものである。

あの人のことを思い出した。私を慰めて、いつかは一緒に泣いてくれたあの人の、眩しいくらいの笑い顔を。マネをして笑っていたら、不意に涙が出た。私には私の体のしくみがよくわからない。よくわからないけれど、なんだかこれでいいような、そんな気持ちになってまた泣いた。

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