言一つ

 何ひとつ上手に喋れなくて情けなくなった。だけど何もかも上手に話せるようになってしまったらそれはもう私ではない。いつも少し世界に脅えて、その分強がって時々毒づいて誤魔化すために口で笑う。欲しいものは欲しいままで諦めなんてつけられない。賞味期限が切れてから焦って食べるくらいならせめて、賞味期限が切れる前に食べてしまえばよかった。そうすれば疑う必要はなかったのかもしれない。だけどこれも過ぎた話だから、今からしたって仕方がない。嫌いになれないのに、好きじゃないと言ったって無意味なように。

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