昨夜を耐えたところで

 この街には私がいる。行き交う誰の目にも映っていない私は、誰かの誰かになれないままだ。だけど確かに私はいる。それを証明するために、住民税が徴収される。私はこの街で生きている。いてもいなくても別にいいのに。

 明日は雨が降ると聞いて、不穏な昨夜を過ごした。100%と書かれていた降水確率もいつの間にか天引きされて低くなっていた。降らない雨もなお悲しい。魔を殺して乗り越えた夜の先にも、あるのは寂しさだから救われない。明日も息をするだけだ。つまらなくて愛おしくて嫌い。

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