行方

 ドアを開けた。開けたドアの先には何も見えない。ただ時折懐かしい匂いがする。ドアはそれ以上開くことも閉じることもない。私は誰かに名前を呼ばれてその声をとても親しく思っている。私は誰かの名前をもう一度呼びたいと思っている。でも誰かなんていないと呟いて沈む。深くて暗くて柔らかい場所。きっと私の眠るべき場所。

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