世界二分割論

 世界が二つに割れてしまったときに、私は東側であなたは西側。そうやって離れ離れになってしまうのが、私たちにとって最良の距離感なんだと思うの。互いの判断で離れることはできないけど、一緒に居続けることもできやしないって、あなただってもう気がついているでしょう?私たちの関係だけのために割れてはくれない世界なら、私は捨てたっていいと思うわ。もう二度と会えなければ私、ずっとあなたの幸せを願っていられる自信があるの。そばにいるとどうしても傷つけたくてたまらなくなるけど、会えないなら生きていてほしいと思う。殺せない距離感のあなたに、願えることなんて生くらいしかないもの。

 西側の空は綺麗ですか?あなたの暮らす世界のことが知りたくて検索してみたけど、私の住む世界にはもうあなたは存在していない。アスファルトを伝う熱も西の地面には伝わらない。
東の海は冷たいですか?あなたがそう問いかけていると信じて、今日も手紙を書いています。いつか私のことを忘れて、他のパートナーと睦まじく幸せを築いていくように祈って、木に手紙を結んで、どうしようもなく会いたくなって、今夜もまた泣いたら、否応なしに陽は昇るから。だから、生きているのです。苦しい夜は超えるためにある。愛しい日々は亡くすためにある。未来は私のためにある。だから今日もあなたをまた好いて、明日もまたあなたを毛嫌うのでしょう。

 今夜の月は美しいそうよ。明日の夜は寒くなるんだって。明後日は雨が降りそうだから、洗濯は済ませておこうかしら。とか、遠くて近いあなたに言うけど、相も変わらずあなたは無関心だから、お願いだから、もう消えてほしい。

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