耳たぶの裏に宇宙があるとしたら、僕は君の宇宙を壊したいと思った。噛み砕いて粉々にして、泣き喚く君にさよならを言う。それくらい酷いままでいないと僕は僕ではなくなってしまう。ゴミ箱のなかの世界さえも君は愛していた。捨てたものたちの新たな旅立ちを君は楽しそうに歌っていた。僕にとっては君こそが広い宇宙だった。だから君以外の宇宙は必要ではなかった。

僕は君の宇宙にはなれないだろう。玉ねぎを切りながら考えていると、左手の人差し指を切った。血の量は大袈裟だけど僕はあまり痛みを感じることができない。君の痛みだって理解ができない。君の膝の皿にある宇宙を壊さないためにも僕は君から手を引かなければならない。君に手を引かれたあの日の笑顔を思い出した。壊すべきではないのに、ぐちゃぐちゃにしてしまいたい。もう少しだけ、君に手を引かれていたい。

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