無意味

 有名な心理テストを得意げに披露されても、私は馬鹿のふりをする。答えを知っているとは言わずに、欲しそうな答えだけをあげる。私にもくだらない心理テストで楽しめるくらい純粋な時期があったと、少し懐かしくも思う。テーマからずれた奇怪な心理戦をしているうちに、私の意識は遠くなっていく。私は私の意識とは関係なく、そこに笑顔で居続けるのだ。そして、適当にでっち上げた心理テストをお返しに披露して、言ってほしそうなことを言ってあげる。それくらいで操れてしまうこの男は、どれ程までに無様で可愛いのだろうか。
お酒を飲むと、私は少しだけ私に戻る。たまに泣けることだってある。だけど、私は私を必要としていないから、すぐにバイバイをするのだ。
目の前の男は、私の胸元を見ている。ざっくりと開いた、私の胸元を見ている。

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