いちのせくん

 おなじクラスのいちのせくんは、少し、かわっている。わたしのことをすきだとか言うし、少しヘンだ。このまえなんて、わたしのかみのけがほしいなんて言って、わたしがあげないと言うと、そのばでなきだしてしまった。センセーが、どうしたの？としんぱいすると、いちのせくんは、ぼくがわたしちゃんをすきになったせいだから。とか言うのです。

 いつかのえんそくで、となりどおしになって手をつないだときに、いちのせくんの手はあせでぬれていた。どうしたの？ときくと、あのときとおなじように、わたしちゃんをすきになったせいだよ。って、それだけ言って、わらったのでした。

 わたしは、こんどうくんのことも、みちひろくんのこともすきだけど、ぜんぜん、いちのせくんの気もちは、わからないの。やさしくて、あしがはやくて、おもしろくて、かっこいいからすき。わたしのすきはそういうすき。べつにフツーなわたしのことをすきな、いちのせくんのすきは、わたしのすきとはちがっているのだと思う。

 わからないから、いちのせくんにきいてみた。わたしの、どこがすきなの？って。そうしたらいちのせくんは、ほら、そういうところだよ。って言ってわらった。いちのせくんは、子どものわたしのことがすきなのに、なんだかわたしよりもすごくおとなみたいで、少しだけこわい。わたしとはなしたあとは、いつもどこかがいたそうで、わたしにはそのりゆうがわからなくて、こわい。

 もし、わたしがいちのせくんに、すきだと言ったとしたら、わたしといちのせくんは、つき合うことになるのだろうか。つき合うって、たのしいことだって、このまえよんだマンガにはかいてあったけど、そのまえにみたテレビばんぐみでは、こいは気もちのいいものだって言っていた。つき合ったら今のかんけいとなにがかわるのだろう。それがわからないのは、わたしがまだ子どもだからなのかなぁ。

 わたしちゃんがぼくのこときらいでも、ぼくはわたしちゃんがすきだから。わたしのおはようにこうかえした、いちのせたかしくん。さんすうのきょうかしょで、りんごとみかんをおつかいしたたかしくんじゃなくて、わたしのクラスのたかしくん。わたしとはなしたあと、いたそうなかおをする、いちのせたかしくん。そんないちのせくんはたぶん、わたしのことを、わたしよりもすきみたい。だからこわい。