菓子缶

 穴があったら入りたい、なければすぐに諦めるけど。犬が歩いて当たった棒は、嘗ては私の脚だった。猫をかぶるために猫を狩るの?いつからそんな物騒な世の中。馬の耳に念仏を唱えた、老婆は明日海の泡になる。嘘みたいな本当の話?本当みたいな嘘の話?ただの下らない冗談だって、言わないよりは言ってみたかった。

 愛されるより愛したいとか、追いかけるより追いかけられたいとか、駆け引き、取り引き、曖昧、愛憎、冗談みたいな本当の話。君の声だけ聞きたかった。君の顔だけを見たかった。君と唇を重ねたかった。ただそれだけ、ただそれだけだった。

 かける言葉もないから毛布、重ねる月日もないから月見、割り切れないから迷惑かけて、用を足したならもう引き際ね。

愛したかっただけだった?愛を集っただけだった?愛されたがった割にはずっと、味気なくってダメだった。

あなたに贈る冗談さえももう浮かばなくなってきたからね。これでもうお開きかもな。今夜でもうお終いかもね。

バイバイの手を振れないように、握り締めることしかできなかった。サヨナラを言う君のその口を、塞いでしまえたらよかったのにな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?