残った夏の部屋

 空の色を曖昧な表現に溶かす。あの雲の形は、などと語ったって、結局は遠いままで近づいたって触れることもできなかった。つまらない。面白くない。大して思い通りにいかない。泣いたって無駄で、笑ったって無力だ。
涙の味で明日を濁す。大袈裟なだけの笑い声を吸い込む換気扇の向こう側は黒い。冷えた二の腕を温める敵すらももうこの部屋にはいない。咳も渇いたまま濡れる。

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