テーキアツノセー

「低気圧のせいだよ」

こんな明らかにバカみたいな浮気の理由なんて聞いたことがない。それなのに彼は平然としていて、私が変みたいな顔でこちらを見る。

「低気圧のせい?」

「そう、低気圧のせい」

彼は目を逸らすこともなく私を見る。私はおかしくなってしまいそうだ。

「全部、低気圧のせい?」

「そうだよ。だから、きっと大丈夫」

彼は穏やかな顔で私を見つめる。なぁんだ、全部、低気圧のせいか。あぁ、よかった。

「私、低気圧なんて大嫌い」

「うん。僕だってそうだ」

あーあ。私はいつも許してしまう。怒れない。情けない。あぁ、低気圧なんて大嫌い。

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