猫と私

 道を歩いていて、猫を見た。見ていると、猫もこちらを見て、怪訝そうに鳴いた。猫はこちらをまだ見ている。猫がこちらを見ているのは、私が竹輪を咥えているからだろうか。私はいつも竹輪を咥えて歩くから、私にとって今は日常に過ぎない。だが猫にとって、私は非日常なのかもしれない。

私はお返しに、怪訝そうに猫を見た。猫も竹輪を咥えている。私たちは似ているようで似ていない。そう思った。猫にとって竹輪を咥えて歩くことが日常か否かは知らないが、私にとって猫の竹輪姿は非日常的なものである。私は猫のように鳴くことをしないから、私はとても人間らしい。

水たまりに映った猫を見ると、猫はまた怪訝そうに鳴いた。水たまりに映る私を見て鳴いた。今夜は寒い。とても寒い。この水たまりもいずれ凍ってしまうだろう。竹輪も凍るほど寒い夜だ。

目を細めると、猫はもういなくなっていた。いつの間にいなくなったのだろう。一体どこへ赴くのだろう。どうして竹輪を咥えて歩いていたのだろう。私はどうして竹輪を咥えて歩いているのだろう。世の中には分からないことばかりだ。

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